余白のメモ

詩と短歌と好きな本
指の上で四季はほほえむ

軌跡

2021-04-18 00:15:07 | 写真の扉の詩
僕は大人になったのかな
夕暮れ時の空の向こうを
誰かに話すように呟いた
背中は希望の羽で覆い
仲良しだったあの人はもういない
楽しそうに笑う君
悲しくて涙に濡れた君
寂しそうに僕を見ていた君
誰よりも愛されていた君
暖かな温もりを持っていた君
柔らかな優しさを持っていた君
いくつもの君の姿が重なっていく
大事に抱えていた絵の具が
気付かない間になくなりそう
戻れないことは知っていたのに
見渡せば敷き詰められた絵ばかり
君に会えない胸のしめつけ
笑った瞳に楽しさが膨れ上がり
いないはずの君の声に振り向いたり
似ている後ろ姿を追いかけたり
思い出の残る場面が残像になって
それがありふれた日々になっていく
そして月日がたった今
泣き虫だった自分を思い返し
成長しているのかなと
自分の中のあの人に
思い出の涙をためながら
でも涙を零さずに
君と出会えた奇跡を口ずさむ

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