手指を凍らせてしまいまして
あんまり愚かなことと途方にくれてしまいました
けれど ひとたび焦ったり思い余ったりして
鉄瓶のなかの熱湯にでも差しいれてしまおうものならば
おそらくは瞬時に黒く砕けてしまうことでしょうから
包帯でぐるぐる巻きにでもして
炭鉢の淵にかざしているより他にありませぬ
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いったいどうして凍らせてしまったも . . . 本文を読む
扉が開かない
そのむこうがわの
がらんどうの部屋に
食い散らかした小骨を
片付けにいきたいのに
どうにも開かないのです
いま ぼくは湿気た土埃を
壁から吸い込むので
胸が重くてつかえて
びっしりとかびているようで
とても苦しいのです
この部屋の向こうの
緑色の空気だって
錆付いた銅の粉なのですから
大した違いはないのです
けれど
あちらに水盤を残してきたのです
きらきらしている . . . 本文を読む
鋼鉄の橋が捻じれ曲がり
焔立つ祈りから崩れ落ちるのを守るために
狂おしく僕の骨が燃える
地底湖から血液が渦を巻いて飛龍のごとく上昇し
この脊髄を洗い 叫び 口から噴出し
ちりちりと 燐粉が 漆黒の闇に明滅する
ああ、たったいま死を超える速度で破壊される僕を見てくれ
巨樹の樹皮のような疱瘡に覆われて
化身を引き伸ばしながら その内側へと巻き込まれる
僕の顔 仮面
この裂け目から覗い . . . 本文を読む
糸水銀の針の雨 降りしきる
糸水銀の針の雨 降りしきる
大宇宙の銅盤へ
糸水銀の針の雨 降りしきる
捲れあがる天蓋の傘へ
緋色の羅針が 剥がれ落ちる
糸水銀の針の雨 降りしきる
墜落するアンドロメダへ
碧玉の十字架上から
花火するペルセウスへ
あの忌まわしき 破裂した朝
結界の化粧を
破るように 落下する
大星雲 . . . 本文を読む