東大構内の銀杏の群れは、東京が冷涼な空気の層に
ひたされる寸前の、ただ一日の穏やかな小春日和の
雲ひとつ見当たらない、紺碧の空に黄金に照り映え、
正門の、格子の鉄扉から安田講堂の塔屋までの、
緩やかな上昇線を、
まだ、ひとが追いつける速度で風が吹き抜けるたび、
舞い散るさくら花びらのごとく、
葉を石畳へと、そおっと降り落として層を為し、
群れ建つ古色蒼然たるゴシック建築の影の上へと
百億の線条で織 . . . 本文を読む
この三連休で、二本のハンガリー・トカイ・5プットを
空けてしまった。実にもったいない話である。
さりとて、理由がないわけではない、・・・と、酒飲みは
あちらこちらに思念、とまではいかない思い付きを
こねくり回して、突如、猛然としゃべり始めるわけだ。
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初日、東大へ散歩へ出て、まだ銀杏の色づきが薄いので
ほどほどのところで踵を返 . . . 本文を読む
まあ、黙祷。
これよりほかに、言葉はない。
見つけようがない。
風の噂に、キース・ジャレット、ジャック・ディジョネットが
ベーシストのオーディションを行った、ということを聞いた。
真偽は定かではない。
ゲイリー・ピーコックは、数年前にがんの手術を受けている。
もう74歳でもある。
2年前の公演で、イヤーモニター、正しくは補聴器を付けて
演奏しているのを見ているから、正直、噂には驚きはない . . . 本文を読む
「自分が姿を消しても、あとに悲しみひとつ残さないと
思うのではない。
たしかに死亡記事は出るだろう。わたしにはむしろ、
そうしたわたしのための喪(それは確かにあるだろう)
を通じてこそ、他人の生が変わりなく続いてゆくさまが
見えるのだ。
誰もがいつものように働き、いつものように楽しみ、
いつもながらの問題を抱え、いつもの場所に出入りし、
いつもの友を訪ねているさまが見えるのだ。
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