翼を休める鳳凰の姿した笙が息を吹き込まれて
絢爛たる音の翼を天球に拡げようとする瞬刻を
次元空間から摘出したとすれば、
それは湧き出でる数多の薔薇のようであるに違いない。
「けふはぼくのたましいは疾み
烏さへ正視ができない
あいつはちやうどいまごろから
つめたい青銅の病室で
透明薔薇の火に燃やされる
ほんとうに、けれども妹よ
けふはぼくもあんまりひどいから
やなぎの花もとらな . . . 本文を読む
5月19日、祖父が亡くなって20年を迎えた。
太い乾竹を震わすような声であったという。
僕はそれを覚えていない。
相当に可愛がられたというけれども、
残念ながら、その殆どが記憶に無い。
川辺の釣具屋でゴカイを買って釣りを試みるも
空しく帰った道すがら、
材木工場から市道を横切って貯木の堀端へ向かう
トロッコの線路を横切るときに、
自転車の後ろ側からしがみついた大きな背中。
死を1週間後に迎 . . . 本文を読む