
5月19日、祖父が亡くなって20年を迎えた。
太い乾竹を震わすような声であったという。
僕はそれを覚えていない。
相当に可愛がられたというけれども、
残念ながら、その殆どが記憶に無い。
川辺の釣具屋でゴカイを買って釣りを試みるも
空しく帰った道すがら、
材木工場から市道を横切って貯木の堀端へ向かう
トロッコの線路を横切るときに、
自転車の後ろ側からしがみついた大きな背中。
死を1週間後に迎えることがわかっていたのか、
ひどい黄疸の顔の奥に潤ませた眼で僕を見た後、
這いずって玄関へ向かった後姿。
生きている祖父の記憶はそれだけである。
小学校2年生に成りたての僕が学校から帰ってきて
父親から祖父の死を知らされたときに
真っ先に取った行動は、
グリーグのペール・ギュントの中の「オーゼの死」を
聴くことだったことを、今もはっきり覚えている。
棺の中の祖父の眼にはうっすらと、涙が拭われずに
そのままに残されていた。
20年が経ち、86歳となった祖母にもさすがに老いが
隠せなくなってきたとはいえ、
家族全員がこれまで無事であったことは、喜ばねばなるまい。
還暦を迎えた父はこの20年の間に腸閉塞や正面衝突を
やらかしたが、健在である。
母や妹はこれといって病は無い。
祖母はこの正月に原因不明の高熱を出して食事を全く
取れなくなったが、今はすき焼を美味そうに食べている。
僕は3年前に熱中症とパニック発作と狭心症の発作を起こして
死にかけたが、後遺症は多少あるけれども生きている。
祖父を祈るより他はあるまい。
****************************
日曜、小人閑居して不善、なる言葉を踏まえて
愛知県美術館で若冲を観る。
凄絶。詳細後日。
帰途、成城石井にてマデイラ、トカイ、アブサンという
禁断の酒3種を購う。
酩酊。
***************************
庭から樋を伝って2階のサッシへと這い登り絡む
蔓薔薇が今年も咲いた。
一輪を切って挿し、鍵盤を背景にして撮影。
僕の寝室としている和室の窓、障子を細く開けると、
サッシから離れて伸び上がる蔓薔薇が
豊かな葉を風に委ねつつ、十数個の花を抱きこんで見える。
夜、障子を細く開けると、
家内から漏れ出た橙色の灯に照らされて
宵闇から手繰り寄せられた薔薇の姿がぼんやりと窓に浮かび、
さながら一幅の軸のようである。
宵闇の薔薇に若冲の動機めいたものを心に感じながら、
アブサンを呷り、今日も眠る。
太い乾竹を震わすような声であったという。
僕はそれを覚えていない。
相当に可愛がられたというけれども、
残念ながら、その殆どが記憶に無い。
川辺の釣具屋でゴカイを買って釣りを試みるも
空しく帰った道すがら、
材木工場から市道を横切って貯木の堀端へ向かう
トロッコの線路を横切るときに、
自転車の後ろ側からしがみついた大きな背中。
死を1週間後に迎えることがわかっていたのか、
ひどい黄疸の顔の奥に潤ませた眼で僕を見た後、
這いずって玄関へ向かった後姿。
生きている祖父の記憶はそれだけである。
小学校2年生に成りたての僕が学校から帰ってきて
父親から祖父の死を知らされたときに
真っ先に取った行動は、
グリーグのペール・ギュントの中の「オーゼの死」を
聴くことだったことを、今もはっきり覚えている。
棺の中の祖父の眼にはうっすらと、涙が拭われずに
そのままに残されていた。
20年が経ち、86歳となった祖母にもさすがに老いが
隠せなくなってきたとはいえ、
家族全員がこれまで無事であったことは、喜ばねばなるまい。
還暦を迎えた父はこの20年の間に腸閉塞や正面衝突を
やらかしたが、健在である。
母や妹はこれといって病は無い。
祖母はこの正月に原因不明の高熱を出して食事を全く
取れなくなったが、今はすき焼を美味そうに食べている。
僕は3年前に熱中症とパニック発作と狭心症の発作を起こして
死にかけたが、後遺症は多少あるけれども生きている。
祖父を祈るより他はあるまい。
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日曜、小人閑居して不善、なる言葉を踏まえて
愛知県美術館で若冲を観る。
凄絶。詳細後日。
帰途、成城石井にてマデイラ、トカイ、アブサンという
禁断の酒3種を購う。
酩酊。
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庭から樋を伝って2階のサッシへと這い登り絡む
蔓薔薇が今年も咲いた。
一輪を切って挿し、鍵盤を背景にして撮影。
僕の寝室としている和室の窓、障子を細く開けると、
サッシから離れて伸び上がる蔓薔薇が
豊かな葉を風に委ねつつ、十数個の花を抱きこんで見える。
夜、障子を細く開けると、
家内から漏れ出た橙色の灯に照らされて
宵闇から手繰り寄せられた薔薇の姿がぼんやりと窓に浮かび、
さながら一幅の軸のようである。
宵闇の薔薇に若冲の動機めいたものを心に感じながら、
アブサンを呷り、今日も眠る。
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