この記事は、削除させて頂きます。
申し訳ありません。
1959年、ジョン・コルトレーンが録音した
「ジャイアント・ステップス」。
わずか16小節の曲の、その前半たった8小節の
コード進行が、ジャズを束縛するビ・バップの方法論を
鮮やかに超えて見せました。
世に言う、「コルトレーン・チェンジ」です。
日本では前田憲男が、この仕組みを始めて解き明かしたそうです。
しかし世の中の理論書のほとんどに載っていません。
需要は多々あるのにもかかわらず。
なので、今日は僕なりの理解を示し、解説しようと思います。
なるべく簡単に。
ただし、最低限の理論知識があることが条件です。それは、
1、コードネームが読め、弾けること。
2、ジャズで使われるスケールの名前とその構成音が
一通りわかること。
3、モードとバップの違いが分かること。
4、最低限、楽譜が読めること。
以上。つまり、ジャズの理論の基礎はきちんと分かって
いることが条件。
もしそれでも不都合なら、おふとんジャズなどのサイトか、
理論書を参考にしながら、これを読み進めてください。
疑問があったり、おかしいと思う人や質問のある人は
またご連絡を。
では、本題。
****************************
ジャイアント・ステップスのコード進行を示します。
この曲は、モードと言われることがあるのですが
それは間違いです。
この曲は、ビ・バップの方法論を究極まで推し進めた
臨界形です。
調性、キーは変ホ長調、E♭major。
コード進行は。以下のとおり。
B D / G B♭ / E♭ / Am D7
G B♭/ E♭ G♭ / B / Fm B♭7
E♭ / Am7 D7 / G / D♭7 G♭7
B / Fm7 B♭7/ E♭ / E♭
ここでは一行目、冒頭の3小節のみ例示します。
『 B D / G B♭ / E♭ 』
全て安定したコードで表示されていますが、わかりやすく、
ビ・バップの方法に基づいて、これをセブンスのコードに
書き換えて、ドミナント進行へと表示しなおしてみましょう。
『 B7 D7/ G7 B♭7 /E♭7 』
ピアノがある人は弾いてみてください。
元のコードと、それほど違和感は無いはずです。
この曲がビバップの延長にあることの証拠です。
ここで、D7と、G7を省略して書き表すと、
『 B7 / B♭7 /E♭7 』
となります。
見覚えがありませんか?
一小節目の B7 の裏コードは F7ですよね。
つまり簡略化すれば、この3小節は、一小節目に置かれるべき
本来のF7の代わりに、代理コード B7が置かれている、
E♭に向かう単純な通常の2-5-1進行、
サブドミナント~ドミナント~トニックの進行として、
F7-B♭7-E♭7、という基本形に
単純化できるんです。
***************************
では、省略した D7-G7 の部分はどう説明するのか、
ということになります。
ここで、適当な楽譜があれば、それを見てみてください。
普通、譜面を見ると、曲の調性は、♭や#の数、その位置で
表されます。
そして、楽譜の上で♭や♯の置かれた位置が全く同じ場合に
調性が2つ存在しているのを知っていますよね?
同じ鍵盤の押さえ方で、2つの調性を弾くことができるのを。
平均律には24の調性がありますから、その対応関係は
次のように成ります。
全音階(ホールトーン)上に沿って記しました、これを
覚えて置いてください。
ハ長調=イ短調 ハ短調=変ホ長調…♭系
(C major=A minor) (C minor=E♭major)
ニ長調=ロ短調 …♯系 ニ短調=ヘ長調 …♭系
(D major=B minor) (D minor=F major)
ホ長調=嬰ハ短調 …♯系 ホ短調=ト長調 …♯系
(E major=C#minor) (E minor=G major)
変ト長調=変ホ短調…♭系 嬰ヘ短調(変ト短調)=イ長調…♯系
(G♭major=E♭minor) (F#minor=A major)
変イ長調=ヘ短調 …♭系 嬰ト短調(変イ短調)=ロ長調…♯系
(A♭major=F minor) (G#minor=Bmajor)
変ロ長調=ト短調 …♭系 変ロ短調=変ニ長調…♭系
(B♭major=G minor) (B♭minor=D♭major)
これらの関係を、「平行調」といいます。
これら二つの調性は、極めて近い関係にあります。
それは、この二つの調の構成音が同じだからです
ハ長調のドレミファソラシドのラから弾いていけば
イ短調でドレミファソラシドになるように。
その関係は、2-5-1進行よりもはるかに強いものです。
例えば、ベートーベンやモーツァルトの交響曲において、
第一主題がハ短調ならば、第二主題は必ず変ホ長調で、
第一主題がト短調ならば、第二主題は必ず変ロ長調で
現れます。
(ロマン派以降、ブラームスの時代にはこの法則は
敗れてしまっていますが)
そう、ある1つの長調と、音程にしてその短三度下から始まる
短調は、その#や♭の数が全く同じ、近接調の関係に
あるということです。
では、ジャイアントステップスに戻ります。
もう一度、冒頭3小節のコード進行を示しましょうか。
『 B D / G B♭ / E♭ 』
このうち、B―B♭―E♭の関係は
通常の2-5-1進行で解釈できるという話はしました。
このとき、省略してあった D-Gの進行について
さきほどの「平行調」の関係に照らして考えて見ます
同じように、セブンスになおして、
『 D7 / G7』と表します。
最終的に、この進行はE♭に解決するのですが、
E♭major と平行調の関係にあるのは、さきほどの表に
照らすと、Cminorですね。
何かに気付きませんか?
Cをトニックとして、ここに2-5-1進行を
当てはめると、
2となるのはD7、5となるのはG7。
もうおわかりですね。
ジャイアントステップスの冒頭3小節には、
主調、E♭major に向かう
『 B7(Fm7) ~ B♭7 ~E♭ 』
というドミナント進行に、
E♭majorの平行調であり、極めて近接的関係にある
C minor へ向かう、
『 D ~ G ~ Cm 』
というドミナント進行が挿入されているのです。
或いは、溶け込んでいる、といってもいいかもしれません
平たく言えば、変ホ長調の中を、ハ短調が密かに流れている。
E♭majorとCminorが同時に存在しているという、
つまり、大きな意味で言う「複調」が見て取れるわけです。
これが僕なりのコルトレーンチェンジの解釈です。
こうした説明で、5~7小節目の
『 G B♭ /E♭ G♭/ B』も
説明できます。
移調しただけですから。
なお、3~5小節目の E♭― Am―D7―Gの進行は
E♭とAmが裏コード(調性代理)の関係にあることを
見抜ければ、通常の2-5-1進行で説明できますし、
後半8小節は、この関係で全て説明できます。
1957年の「モーメンツ・ノーティス」に登場する
『Em A7/ Fm7 B♭7 /E♭』は、
一小節目のEmが、B♭と調性代理の関係にあることを
見抜ければ、
一小節目が本来、二小節目でDに解決すべきものを、
EmをB♭の代理コードとして取り扱うことで無視し、
三小節目のE♭に解決するドミナント進行に直接
連結するという荒業であることが見抜けます。
これに比べれば、「ジャイアント・ステップス」に
見られる進行はそれよりはるかに理論的根拠も強く
しっかりしているということです。
下に続く。
申し訳ありません。
1959年、ジョン・コルトレーンが録音した
「ジャイアント・ステップス」。
わずか16小節の曲の、その前半たった8小節の
コード進行が、ジャズを束縛するビ・バップの方法論を
鮮やかに超えて見せました。
世に言う、「コルトレーン・チェンジ」です。
日本では前田憲男が、この仕組みを始めて解き明かしたそうです。
しかし世の中の理論書のほとんどに載っていません。
需要は多々あるのにもかかわらず。
なので、今日は僕なりの理解を示し、解説しようと思います。
なるべく簡単に。
ただし、最低限の理論知識があることが条件です。それは、
1、コードネームが読め、弾けること。
2、ジャズで使われるスケールの名前とその構成音が
一通りわかること。
3、モードとバップの違いが分かること。
4、最低限、楽譜が読めること。
以上。つまり、ジャズの理論の基礎はきちんと分かって
いることが条件。
もしそれでも不都合なら、おふとんジャズなどのサイトか、
理論書を参考にしながら、これを読み進めてください。
疑問があったり、おかしいと思う人や質問のある人は
またご連絡を。
では、本題。
****************************
ジャイアント・ステップスのコード進行を示します。
この曲は、モードと言われることがあるのですが
それは間違いです。
この曲は、ビ・バップの方法論を究極まで推し進めた
臨界形です。
調性、キーは変ホ長調、E♭major。
コード進行は。以下のとおり。
B D / G B♭ / E♭ / Am D7
G B♭/ E♭ G♭ / B / Fm B♭7
E♭ / Am7 D7 / G / D♭7 G♭7
B / Fm7 B♭7/ E♭ / E♭
ここでは一行目、冒頭の3小節のみ例示します。
『 B D / G B♭ / E♭ 』
全て安定したコードで表示されていますが、わかりやすく、
ビ・バップの方法に基づいて、これをセブンスのコードに
書き換えて、ドミナント進行へと表示しなおしてみましょう。
『 B7 D7/ G7 B♭7 /E♭7 』
ピアノがある人は弾いてみてください。
元のコードと、それほど違和感は無いはずです。
この曲がビバップの延長にあることの証拠です。
ここで、D7と、G7を省略して書き表すと、
『 B7 / B♭7 /E♭7 』
となります。
見覚えがありませんか?
一小節目の B7 の裏コードは F7ですよね。
つまり簡略化すれば、この3小節は、一小節目に置かれるべき
本来のF7の代わりに、代理コード B7が置かれている、
E♭に向かう単純な通常の2-5-1進行、
サブドミナント~ドミナント~トニックの進行として、
F7-B♭7-E♭7、という基本形に
単純化できるんです。
***************************
では、省略した D7-G7 の部分はどう説明するのか、
ということになります。
ここで、適当な楽譜があれば、それを見てみてください。
普通、譜面を見ると、曲の調性は、♭や#の数、その位置で
表されます。
そして、楽譜の上で♭や♯の置かれた位置が全く同じ場合に
調性が2つ存在しているのを知っていますよね?
同じ鍵盤の押さえ方で、2つの調性を弾くことができるのを。
平均律には24の調性がありますから、その対応関係は
次のように成ります。
全音階(ホールトーン)上に沿って記しました、これを
覚えて置いてください。
ハ長調=イ短調 ハ短調=変ホ長調…♭系
(C major=A minor) (C minor=E♭major)
ニ長調=ロ短調 …♯系 ニ短調=ヘ長調 …♭系
(D major=B minor) (D minor=F major)
ホ長調=嬰ハ短調 …♯系 ホ短調=ト長調 …♯系
(E major=C#minor) (E minor=G major)
変ト長調=変ホ短調…♭系 嬰ヘ短調(変ト短調)=イ長調…♯系
(G♭major=E♭minor) (F#minor=A major)
変イ長調=ヘ短調 …♭系 嬰ト短調(変イ短調)=ロ長調…♯系
(A♭major=F minor) (G#minor=Bmajor)
変ロ長調=ト短調 …♭系 変ロ短調=変ニ長調…♭系
(B♭major=G minor) (B♭minor=D♭major)
これらの関係を、「平行調」といいます。
これら二つの調性は、極めて近い関係にあります。
それは、この二つの調の構成音が同じだからです
ハ長調のドレミファソラシドのラから弾いていけば
イ短調でドレミファソラシドになるように。
その関係は、2-5-1進行よりもはるかに強いものです。
例えば、ベートーベンやモーツァルトの交響曲において、
第一主題がハ短調ならば、第二主題は必ず変ホ長調で、
第一主題がト短調ならば、第二主題は必ず変ロ長調で
現れます。
(ロマン派以降、ブラームスの時代にはこの法則は
敗れてしまっていますが)
そう、ある1つの長調と、音程にしてその短三度下から始まる
短調は、その#や♭の数が全く同じ、近接調の関係に
あるということです。
では、ジャイアントステップスに戻ります。
もう一度、冒頭3小節のコード進行を示しましょうか。
『 B D / G B♭ / E♭ 』
このうち、B―B♭―E♭の関係は
通常の2-5-1進行で解釈できるという話はしました。
このとき、省略してあった D-Gの進行について
さきほどの「平行調」の関係に照らして考えて見ます
同じように、セブンスになおして、
『 D7 / G7』と表します。
最終的に、この進行はE♭に解決するのですが、
E♭major と平行調の関係にあるのは、さきほどの表に
照らすと、Cminorですね。
何かに気付きませんか?
Cをトニックとして、ここに2-5-1進行を
当てはめると、
2となるのはD7、5となるのはG7。
もうおわかりですね。
ジャイアントステップスの冒頭3小節には、
主調、E♭major に向かう
『 B7(Fm7) ~ B♭7 ~E♭ 』
というドミナント進行に、
E♭majorの平行調であり、極めて近接的関係にある
C minor へ向かう、
『 D ~ G ~ Cm 』
というドミナント進行が挿入されているのです。
或いは、溶け込んでいる、といってもいいかもしれません
平たく言えば、変ホ長調の中を、ハ短調が密かに流れている。
E♭majorとCminorが同時に存在しているという、
つまり、大きな意味で言う「複調」が見て取れるわけです。
これが僕なりのコルトレーンチェンジの解釈です。
こうした説明で、5~7小節目の
『 G B♭ /E♭ G♭/ B』も
説明できます。
移調しただけですから。
なお、3~5小節目の E♭― Am―D7―Gの進行は
E♭とAmが裏コード(調性代理)の関係にあることを
見抜ければ、通常の2-5-1進行で説明できますし、
後半8小節は、この関係で全て説明できます。
1957年の「モーメンツ・ノーティス」に登場する
『Em A7/ Fm7 B♭7 /E♭』は、
一小節目のEmが、B♭と調性代理の関係にあることを
見抜ければ、
一小節目が本来、二小節目でDに解決すべきものを、
EmをB♭の代理コードとして取り扱うことで無視し、
三小節目のE♭に解決するドミナント進行に直接
連結するという荒業であることが見抜けます。
これに比べれば、「ジャイアント・ステップス」に
見られる進行はそれよりはるかに理論的根拠も強く
しっかりしているということです。
下に続く。
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