DV加害者更生プログラム(既婚、未婚、問わず)

DVをしているのではないか、悩んでいる方に心理テスト、グループエンカウンター等を用いて更生の道をお手伝いします

気持ちに寄り添う事

2020-01-17 00:07:00 | 【DV加害者更生教育プログラム】

気持ちに寄り添うこと(30代男性Oさん)

既に離婚となった元妻の元で暮らす子どもたちと月に1、2回の面会で、たまたま電器店に寄った。何を買うでもなく店内を見ていると、小学4年の息子太郎(仮名)がICレコーダーの棚をじっと見ている。
小学1年の娘花子(仮名)は自分の意思をはっきりと言うが、息子は思っていることをなかなか口に出さないことがある。時々癇癪を起してしまい手を焼くときもある。

ICレコーダーの前から動かない太郎に、どうしたの、これが欲しいの?と聞いてもはっきり意思表示しない。何回か聞いていると、わずかに頷いた。
私は小学4年生にICレコーダーは必要ないだろうと思ったが、頭ごなしに、そんなの必要ないでしょとは言わずに、なぜ欲しいのか聞いてみた。
太郎ははっきりとは答えない。なぜ欲しいのかという気持ちを自分の言葉で表現できないのかもしれない。

その数分前、ラジカセ売り場を見ていて、突然フラッシュバックのように思い出したことがある。
私が中学生くらいの頃、母に自分専用のラジカセをねだり、子どもたちと行ったのと同じ電器チェーン店に連れて行ったもらった。
当初はカセットテープとラジオのみがついている最低限の物でいいと思っていたが、展示されている商品を色々と見ているうちに、どれが欲しいのか自分でも決められなくなってしまった。

スピーカーは一つか二つか、メーカーはどこがいいか、ラジオのアンテナは、など悩んでしまうことはたくさんあった。店員さんにも聞いたりしたが、なかなか決められない。
そのうち、母はどれがいいの早く決めなさいと不機嫌になりだした。そうは言われてもすぐには決められない。店員さんも巻き込んで不穏な空気になる。
うんざりした様子の母に、早く決めなさい厳しく言われ、苦しみながら、ソニーのスピーカーが二つついているラジカセを選び、当初の目的通り買ってもらった。
自分が欲しいものを親にねだり買ってもらった。確かに恵まれていたかもしれない。
しかし、私は家でこのラジカセを見るたびに、なぜか悲しい気持ちにもなった。自分が欲しくて買ってもらった物なのに、素直に喜べなかった。

太郎は相変わらずICレコーダーの前から動かない。ICレコーダーの値段は最低でも5000円ほどと、誕生日でもクリスマスでもないの時に買うには高すぎる値段だった。
「そうか、これが欲しいんだね。自分の声を録音してみたいんだね。自分の声を聞くって楽しいよね。自分の声って自分が聞こえるのと、他の人が聞こえる声だと違うんだよね。
太郎が欲しい気持ちはパパはよくわかるよ。自分の声を録音したいなら、パパのスマホのアプリでも録音できるよ。そうか、自分専用のが欲しいのか。
もう少し大きくなってからでもいいんじゃないかな。(商品の宣伝ポップを指差しながら)ほら、これは高校生くらいの人が使っているでしょ」

私は息子の、欲しいという気持ちを決して踏みにじらないように気を付けた。
それでも、息子はなかなかICレコーダーの前から動こうとせず、私を避け始めた。そろそろ行くよと冷静に声をかけ、娘と歩き出す。そのうち息子も歩き出した。

ラジカセを買ってもらった私と、ICレコーダーを買ってもらえなかった太郎。
行動だけを見れば私の方が幸せだったのかもしれない。しかし、欲しいという子どもの気持ちを大切にしたのは。
その後、息子は癇癪を起すこともなく、すぐに機嫌を取りなおした。
息子は、私から元妻への言葉でのDVだけでなく、身体的DVも、物心ついた年齢で目にしている。私は面前DVをしてしまった。それが、元妻が私との別居を決断する大きな転機になったことだと思う。
妻の気持ちに全く寄り添えていなかった私は、別居されて当然だった。

癇癪を起しやすい息子に、私のDVがどのように影響しているのかわからない。とても心配で、本当に申し訳ないという大きな後悔だけしかない。
だからこそ、私は子どもたちの気持ちに精一杯寄り添っていきたい。
太郎、花子、パパは二人のことが大好きだよ。大切にするからね。

 

リエゾンからのコメント

インナーチェンジングセラピーをしていて毎回思うことでもあるのですが、子ども側がどんなことに傷ついてしまうかを大人側がまるで分っていないという事です。
買ってあげるのだから感情をぶつけていたとしても許されると、どこかで大人側は自分にOKを出しているのです。
子どもがなぜ、禁止令決断をしているかを大人が理解出来たなら感情に任せた行動をしなくなるでしょう。
子ども側に立ち、どう感じどう考えるか、想像できるようになるでしょう。禁止令決断は、子どもの生き延びるために行う承認手段でもあるのです。

でも多くの大人は禁止令の事を考えることなく子育てを行っています。
交流分析を学ぶことで、禁止令の重大さがわかってきます。もっと早くに教えてほしかったと言われることが多く、今年は少しでも多くの大人に交流分析を広めていきたいと思います。

彼はすぐ切れなくなりました。それだけではありません。子どもの気持ちを大切にすることを考えられるようになりました。以前の彼からは想像できない成長ぶりです。まだ改善点はありますが、それも彼なら学んでいけるでしょう。期待しています。

 

 

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