DV加害者更生プログラム(既婚、未婚、問わず)

DVをしているのではないか、悩んでいる方に心理テスト、グループエンカウンター等を用いて更生の道をお手伝いします

15センチの隙間から

2020-01-20 08:09:40 | 【DV加害者更生教育プログラム】

題名:15センチの隙間から (40代男性Pさん)

本文:我が家は、玄関を入るとリビングへ続く廊下があり、リビングと廊下の間仕切りとしてドアが付いています。
 間仕切りのドアには、約15センチの幅でガラスがはめられていて、リビングからの灯りや中の様子がチラリと見る事ができます。

 私は、帰宅の際、玄関ドアの前で一呼吸置いてからドアを開けます。
 すると、間仕切りの15センチの隙間から、リビングで妻がマスクをし始める姿が見えてきます。
 私は、その姿を隙間から見ながら、以前は夫婦の寝室であった部屋に入ります。
 私と妻の間には、会話らしい会話はなく、必要な事はメールでやり取りをし、内容は、お互いに敬語を使って会社の事務連絡のようです。
 以前は、夕食を準備してくれていましたが、今は完全に三食外食になっています。
 何かの用事がない限り、リビングには行きませんし、リビングには気軽に入れる雰囲気はなく、間仕切りのドアがちょっとした結界のようになっています。
 ゴミ箱にゴミを捨てる・郵便物を置く等でリビングに入る際は、プールに飛び込む様に、息を止め最短時間でリビングを出入りするような感覚です。
 逆に、廊下側にあるトイレや洗面、洗濯等で妻がリビングを出る際は、バッティングしないよう、私は部屋から出ないようにしています。
 妻と鉢合わせになってしまうと、たちまち妻の眉間には深いシワがより、腫れ物に触るかのように、私と距離を取ろうと、身体を避けます。
 仕事が休みの日は、家に居ないようにして極力、顔を見せないようにしています。
 本来であれば、別居する方がお互いにとって、精神衛生上良いのかと思いますが、経済的事情もあり、別居する事が出来ず、家庭内別居と言える現状です。
 今の状態を作ってしまったのは、私のせいなので、妻にも息子にも申し訳ないと思っています。

 私は、昨年の3月からリエゾンに通っています。
 幸いな事に、妻もほぼ同時期からリエゾンに通ってくれています。
 
 私は、リエゾンに通い、面談やグループに参加する事によって、自分の問題を、真正面から向き合い、真摯な気持ちで取り組むようになりました。
 正直なところ、リエゾンに通うまでは、DV加害者としての認識は薄く、自分の行動に問題があるのを薄々感じながらもそれを妻のせいにしていたのだと。
「何で、怒らせる」「どうせ、俺が全部悪いんだろ」等々…
 気に食わない態度や言動は勿論、ちょっとしたことでいつも「キレる」自分がいて、何時も一度キレると自分でも止める事が出来ず、そのくせ、後から罪悪感が襲って来て落ち込むような事が続いていました。

 何時も、所謂、ラケット感情(偽物の感情)の応酬で、常に妻より上に、妻をコントロールしようとしていました。
 グループに参加する際、配られるプリントの課題は、毎回自分の事の様で、身につまされています。
 
 妻もリエゾンでの面談により、妻自身の問題に向き合いインナーチェンジングセラピーをする事で、これまで私が怖くて言えなかった事が少しずつ言えるようになってきているように感じます。

 リエゾンに通ってからも、これまでの私からのDVが酷すぎたので、私の不用意な一言でフラッシュバックが起こり、「あなたと同じ空気を吸う事も嫌」等と言われた事もあります。
 以前の自分であれば、この一言で、我を忘れる程激昂し、キレ、恐ろしい結末になっていたのは間違いありません。

 リエゾンに通って学ぶ事で、私自身が驚いた変化があります。

 それは、自分が「キレなくなった」事。
 「キレない自分」にホッとして、気持ちが楽になっている事。

 今までは、自分の意に反する事があると、自動的にスイッチが入って、手がつけられない状況だったのですが、リエゾンでの学びが進む程「ちょっと待てよ」と一呼吸置く自分がいるのです。
 これには本当に驚くと同時に、嬉しいと思い、更に妻に対して、本当にすまなかったとの謝罪の気持ちが自然に湧き上がってきました。

 また、もう一つ大きな変化として、映画等で男性が女性に暴力行為をするシーンを見ると、その行為が演出上の虚構であっても違和感というか、嫌悪感を抱くようになったのです。
 以前の自分であれば、演出上の事として何の感情も持っていなかったのですが。

 現状は、薄氷の上を歩くような状態で、正直息が詰まる思いの毎日で、妻の態様に気持ちが落ち込んだり、なんとかモチベーションを上げたりと辛い状況ですが、そんな時思うのです。
 「妻は何時もこんな気持ちだったのか」と、妻は「子供が生まれたら変わってくれるだろう」「一緒に旅行すれば家族を大切にしてくれるだろう」今度こそ、今度こそと何度も私が変わる事を期待し、何度も手を差しのべていてくれていたのに、私はその気持ちを汲み取らず、何度も何度も裏切ってきました。
 私が今感じている辛さの何百倍も何千倍も何万倍もの辛さを妻はこれまで我慢してきたのだと。
 しかも、今も妻の苦しみは続いているのだと。

 今、15センチの隙間からは、目標を見つけたようで、少しずつ目標に向かって勉強している妻の後ろ姿を見る事が多くなってきました。
 妻の後ろ姿を見る度に尊敬の念が湧き上がります。

 今の状態がいつまで続くのか、全く分かりません。
 妻の望みは、私との離婚なので、離婚しそれぞれの道を歩むかもしれませんし、私が目標としている夫婦関係を修復する事が出来るかもしれません。
 どちらの道になったとしても、パートナーと親交親密な関係になれればと思います。
 まだまだ、私には足りない事が多いですし、今もまたキレるのではないかとの恐怖はあります。
 何より自分が変わらなければ、また、自分は変われるとの気持ちを持って、今日を過ごしています。

リエゾンからのコメント

今、一番つらい状態でしょうね。この状態を受け止めながら反省し考え行動している、人間は何時からでも成長できるのだと本当に思います。
この先は妻次第なので、離婚かもしれませんし奇跡が起きるかもしれませんし、本当に分かりません。彼女が許す日が来るのかどうかにかかってきます。
私たちは小さい頃から悪い事をしたら謝るということを親から先生から教わってきました。当たり前の事が意味を変えて覚えてしまう子どももいるのです。
「謝れば許される。」「謝ったのに許さない方が悪い。」と。
私は女性たちに「許さなくてもいい」と伝えています。
許されない事をされた時、許さなくていいのです。
「謝っているのだから許してあげなさい。」親から先生から言われた覚えもある人は少なくないのではないでしょうか。
交流分析でこのやり取りから学んでしまうことは「他者優先」です。たとえ自分がどう感じていても、相手が取るべき対応をしたらそれを受け入れるのが礼儀であり、人として当たり前なのだと。
禁止令で言うならば「離れるな」「お前であるな」「重要であるな」「見えるな」などを決断することが考えられます。これらの決断からは、「相手に合わせ、自分の気持ちや意見を言わず、夫を立て、自分の人生は家族優先」で生きてきた日本の女性たちが浮かび上がってきます。果たしてそれが本当に良かったことだったのか?多くの女性たちは「NO]というでしょう。
この状態は太陽の光に照らされてやっと存在が見える月のようではないですか。(女性解放運動家、平塚らいてうさん曰く)

 加害者プログラムのリエゾンには男性に負けない位の多くの女性の方たちが学んでくださっています。Pさんが切れなくなったこと、暴力シーンに違和感を持つようになったこと、パートナーが自分のために勉強を始めていること、全てインナーチェンジングセラピーを受けたからに他なりません。
調布市男女共同参画さんの依頼で1~2か月に1回ミニ講座をさせていただいていますが、禁止令、インナーチェンジングセラピーを、多くの方に伝えられる機会をいただき本当に感謝です。一人でも多くの方に、人生脚本を変えることで今の理不尽な生活から抜け出せるし、Pさんのように成長は今からでも出来るという事を知ってほしいと思います。自分を知ることから全てが始まります。生まれながらに暴力的な子どもはほとんどいない、生い立ちから学んでいくものなのです。本来のPさんは暴力的な人ではなく、今からでも本当の本来の自分を取り戻していけるのです。

http://liaison-chofu.com/

 

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