先ほど、ラ・フォーレ原宿での「本田美奈子.フィルムコンサート“舞輝(BUKI)” TOUR 2006-2007」を、見てきたところだ。記憶が鮮明なうちに、とにかく、今の感動を書き残しておこうと、渋谷のネットカフェに飛び込んだのである。
自分が見たのは、第1回目の午後1時開演の上映だった。どれだけの混み具合になるか見当がつかなかったので、1時間半前の午前11時30分に会場に到着してみると、すでに20人以上の列ができている。全館300席ということなので、これは余裕だ・・・と思いきや、後から来た人たちが、次々と、自分の前方のほうに並んでゆくではないか。どうやら「ぴあ」で前売り券を購入した人たちが、優先的に入場できるらしい。
それでも、心配は杞憂だった。12時15分の開場時には、問題なく、中ほどの良い席を確保することができた。周囲を見渡すと、さまざまな年齢層の人たちの姿が見える。ふだんはあまり音楽を聴きそうもない年配の方々から、子供連れの夫婦、若いカップルまで、実にバラエティに富んでいる。自分のような美奈子ファンもいれば、通りすがりに興味を持って立ち寄ってみた人たちも、少なくないようだ。
午後1時になり、上映が始まる。まずは、美奈子さんが出演したテレビCMの特集。懐かしいカルビー・ポテトチップスの3種類のCM、佐藤製薬のストナエース、東芝扇風機「風のイマージュ」、ろうきんのCMが2種類、シャワランのシャンプーとリンスに、同社の牛乳粉石けん・・・と続く。こういうテレビ時代があったんだよと、若い人たちに紹介する意図がうかがえる。
続いて、いよいよ本編。まずは2004年のライブから2曲、①誰も寝てはならぬ ②アメイジング・グレイス。②のほうは、すでにDVDで出ているのと同じライブ映像だが、①のほうは、②と同じ衣装であるところを見ると、同日に行われたライブのようだ。これを歌う美奈子さんは、声量といい、迫力といい、まさにオペラ歌手顔負け。文句なく、すごい。まるで、時速100マイルの剛速球でいきなりストライクを取られたかのように、呆然としてしまった。
この2曲が終わると、昔にタイムスリップし、1987年の3つのヒット曲 ③Oneway Generation ④孤独なハリケーン ⑤Crazy Nights のメドレー。「ミュージック・ステーション」等での映像と思われ、いずれも、切れ味がよく、パンチの効いた若き美奈子さんのパフォーマンスを堪能できる。
続いて、MINAKO with WILD CATS時代(1988年から1989年)の ⑥勝手にさせて ⑦愛が聞こえる ⑧あなたと、熱帯。
この時期の映像は貴重だ。セールス的には壁に当たった時期でもあるので、素通りされることも多いのだが、再評価の進んでいる今、この時期のライブDVDを、「元祖J-POP」という触れ込みで出しても面白いと思う。
この後、ふたたびCM映像の特集となり、グリコ・ポッキー、AUREXのCDコンボ、「つばさ」を歌ったオッペン化粧品、が登場する。
ここからはミュージカル・ナンバーとなり、⑨命をあげよう(「ミス・サイゴン」より) ⑩オン・マイ・オウン(「レ・ミゼラブル」より) ⑪ララバイ(「十二夜」より) ⑫FRIENDS(「クラウディア」より)、が歌われる。
この中で、圧巻だったのは⑩だ。CDでは、アルバム「心を込めて・・・」に、デモテープからのテイクが収録されていて、もちろんそれはそれで素晴らしいのだが、今回、劇中で歌われる同曲は、本当に鬼気迫るものがある。これぞ、完成版の「オン・マイ・オウン」だと思う。ミュージカルの場合は、全体をDVD化するのは難しいかもしれないが、せめて美奈子さんが歌う、この曲の部分だけ、市販できるようにはできないだろうか、と願わずにはいられない。
この後は、いよいよクラシック・アルバムの夢がかなう時期のナンバーとなる。
⑬AVE MARIA ⑭ニューシネマ・パラダイス ⑮Time To Say Goodbye、が情感たっぷりに歌われると、「ありがとう」の詩の朗読をはさんで、本日のクライマックス、⑯つばさ ⑰ジュピター ⑱1986年のマリリン、のライブ映像となる。
ここでの⑯は、野外ライブで、場所は阿蘇と聞いたことがあるのだが、素晴らしい演奏だ。ゆっくり目のテンポが雄大なスケールを生み、文字通り、大空へ飛翔していくような感動に包まれる。やはり、圧倒的な名曲。しかも美奈子さんは、あのロングトーンの間、顔色ひとつ変えず、ごく普通に、にこやかな笑顔に戻っていくのだ。ほんとうに、すごい人だと思う。
⑰⑱も、すごい。クラシック音楽の名曲「ジュピター」の、荘厳なドラマが幕を閉じたかと思いきや、そのままの衣装で、「1986年のマリリン」の華麗なダンスが始まる!
魔法のような離れ業だ。まさに、歌の女神(ディーバ)と呼ぶにふさわしい。ふだんテレビで見かけるような歌手とは、格段にレベルの違う存在。間違いなく、日本最高、いや、世界最高かもしれない。
これが、ほんとうの芸術というものだと思う。「うまい」とか「美しい」とかいう次元ではなく、「圧倒的に、ものすごいもの」。芸術とは、まさに爆発であり、落雷のような衝撃の伴うものなのだ。
自分は初めて、感傷ではなく、歌の力だけで、泣いた。
芸術のすごさを教えてくれる、ほんとうの大歌手。
午後1時開演の上映のあと、少し時間を置いて、第4回目の5時30分開演の上映を再び見た。今度いつ見れるかわからないので、目に焼き付けておきたかったのだ。
明日は、もうアメリカに戻らなければならないが、まだ、渋谷の追悼展について書いていないので、後日、アップしたいと思う。
★「ラ・フォーレ原宿」 ここの6階のミュージアムで、本田美奈子.フィルム・コンサートが行なわれた。
美奈子さんが文字通り「舞い輝く」フィルムコンサート・ツアーが、全国に感動の渦を巻き起こすことを期待したいと思います。