[映画紹介]
「civil war」とは、「内戦」のこと。
特に定冠詞「The」をつけ、大文字で表記して
「The Civil War」と書くと、
アメリカ合衆国唯一の内戦「南北戦争」(1861~1865年)を指す。
この映画は、現代のアメリカが内戦に突入したら、
という仮定で作られた作品。
近未来の映画かというと、そうでもなく、
カメラはフィルムカメラ、
デジタルカメラは一部しか登場せず、
ノートパソコンもスマホも出て来ないから、
1990年頃の設定か。
カリフォルニア州とテキサス州の西部勢力が結託して政府に反抗、
フロリダを中心とした南部同盟なども話に出て来るが、
アメリカがどういう形で分裂しているかの説明はない。
また、何が原因で内戦が起こったかも明確ではない。
ただ、19州が政府に離反、というプレス説明がある。
それがどこなのかは示されない。
↓は、あるサイトから獲得した布陣。
青が忠誠州で、政府側。
それ以外の3色が反旗をひるがえした州。
大統領は憲法違反の3期目で強権的な独裁者らしい。
そのあたりが原因か。
政府側、反乱軍側両方の抗争状態を描く
という従来のハリウッド的手法は取らず、
映画は、14か月間もマスコミの取材に応じていない
大統領に単独インタビューするために、
ニューヨークからワシントンDCに
自動車で向かう5人のジャーナリストに付き添う形で展開する。
独特な映画を製作するA24ならでの作品だ。
メンバーは、有名な女性フォト・ジャーナリストと老齢の記者、
ベテラン記者と運転手、
それに、報道カメラマンを目指す、駆け出しの若い女性。
5人は行く先々で内戦の実情にぶつかる。
銃弾が耳をかすめる市街戦の真っ只中、
避難民が停泊するスタジアムのようなところ、
正体不明のスナイパーの狙撃の現場、
大量の市民の死骸を処理する兵士たち。
はっきり分かるのは、
銃の前に一般市民は無力だということ。
そして、ワシントンDCに突入した軍隊に同道した
報道カメラマンたちは、
大統領官邸にまで入り込む。
目的は大統領の身柄と殺害・・・
この首都突入のシーンは、すさまじい臨場感で描かれる。
耳を覆う炸裂する銃撃音。
アカデミー賞の音響賞にノミネートされるのは確実だ。
そして、ピュリーツァ賞確実のスクープ写真をものにしたのは・・・
アメリカの公開は4月12日。
1861年の南北戦争の始まった日だ。
2週連続でボックスオフィスで1位を獲得。
観客の興味を引き付けたようだ。
時は大統領選の前哨戦のさ中。
アメリカの分断がクローズアップされる状況での公開だった。
内戦ほど愚かなことはない。
国土を疲弊させ、民衆の命を奪う。
対立勢力に武器を供与する
外国勢力の支援なしには内戦は成り立たないから、
「代理戦争」の様相を呈し、
膨大な難民を生む。
難民問題とは、実は本国の政治問題だ。
ベトナム、ドイツという分断国家は統一したが、
朝鮮半島には、今だに分断国家が存在する。
日本も戦後処理で、分断の危機があったという。
もし日本に内戦が起こったら、
と想像するとぞっとする。
同じ民族同士で殺し合う姿は見たくない。
副題は「アメリカ最後の日」。
アメリカに内戦が起こったら、
アメリカは世界の指導者の立場を失墜、
世界情勢は大きな変化をし、
その影響から日本は逃れられない。
国家の分断を描いた、極めて今日的な内容だ。
監督は、「エクス・マキナ」のアレックス・ガーランド。
報道カメラマン役で、キルステン・ダンストが出演している。
5段階評価の「4」。
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