[映画紹介]
結婚式をあげ、婿・ディーパクの故郷に向かう花嫁・プール。
インドにも大安吉日のような結婚日和があり、
乗った満員列車には、花嫁が数人いた。
インドの風習で、花嫁は夫と家族以外には顔を見せない、
ということで、ベールで顔を隠していた。
何度か乗客の入れ替えがあったり、
トイレに立ったりしているうちに、
席がごちゃごちゃになっししまう。
気づいた時には、下車駅で、
ディーパクはあわてて花嫁の手を引いて、列車を降りる。
バスに乗り、ディパークの実家に帰って、
花嫁のベールを取ると、現れたのは、別人だった。
一方、取り残されたプールの方は、
眠ってしまい、降りたのは、見知らぬ町。
何事も夫任せだったプールは、
彼の家の住所も電話番号も知らない。
「夫に捨てられた」と噂されるから地元にも帰れない。
そんなプールを助けてくれたのは、
物乞いの男と少年、それに、ホームで食べ物を売るおばさん。
プールはおばさんの店で働きながら、
救助の来るのを待つ。
ディーパクの方も困り果てていた。
間違って連れて来た女性・ジャヤは、
夫と自分の名前を偽って告げ、
出身や町も、どうやら嘘らしい。
その上、家に居座ってしまう。
はて・・・
という花嫁取り違え事件の顛末。
箱入り娘だったプールは、
初めて働き、給料を得る喜びを知る。
ジャヤは人々と交わり、
本当にしたいことを実現する。
予期せぬ旅を通して、
新しい価値観と可能性を手にし、
人生を切り開く二人の女性の物語でもある。
途中、ジャヤが犯罪者の疑いをかけられたり、
夫が訪ねて来ての一悶着があるが、
最後は、警部補の粋な計らいで決着し、
プールとディーパクは再会する。
ダンスシーンばかりがインド映画じゃないとばかりに、
じっくりと描かれる人間ドラマが楽しい。
踊りはないが、歌で物語が進行するのは、
やはりインド映画。
舞台が都会ではなく、
徹頭徹尾、農村での出来事。
美しい風景の中で、
登場するのは、善人ばかり。
(一人だけ悪人が出て来るが)
それでも、結婚事情、持参金や
男女差別、女性の人権、高度教育への門戸、
鉄道事情、警察の腐敗など
インドの様々な問題点も織り込まれる。
涙と笑いの中に、そうしたスパイスも利いている。
プロデューサーはインドの大スター、アーミル・カーン。
脚本コンペで本作の原案を発掘したアーミル・カーンは、
脚本をふくらました上で、
監督に元妻・キラン・ラオを起用。
最初、警部補の役を演ずるつもりだったが、
自分が演ずると、
この人物が何かするぞ、と観客が予想してしまうので、
代わりに知名度が低いラヴィ・キシャンを起用。
配役に高名な俳優を起用するリスクを回避した、
賢い選択だ。
トロント国際映画祭でスタンディングオベーションを巻き起こし、
映画評価サイト「Rotten Tomatoes 」では
批評家100%、観客95%の支持という驚異の高評価を得た。
花嫁二人、夫のディーパグはじめ、
登場人物が全て魅力的。
インドの人々の善良さが描かれ、
爽やかなエンディングで、
観客をみな幸福な笑顔にする、
まさに映画。
5段階評価の「4」。
新宿ピカデリー他で上映中。
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