[映画紹介]
1969年。
アポロ計画で、月に人類が向かおうという時代。
ヒューストンのNASA近くの町に住む
9歳の小学校4年の少年・スタンのところに、
NASAの職員がやって来る。
「宇宙船のサイズを
設計ミスで小さく作ってしまったので、
体の小さい君に、このアポロ10 1/2号に乗って、
月に向かってもらいたい。
極秘任務だから、親にも兄弟にも言わないで。
サマーキャンプに行っていたことにしておくから」
という話に乗って、スタンはNASAで訓練を受け、
月に向かう。
実験は成功し、
スタンは月面着陸第1号になるが、
秘密計画だったので、報道されず、
月面着陸の偉業は、
次のアポロ11号のアームストロングに譲られる・・・
という話なのだが、
メインは当時のアメリカの標準的家庭での生活や
学校での出来事が延々と続く。
これが興味深い。
監督のリチャード・リンクレイターは、
ヒューストン生まれで、当時9歳。
つまり、50年前の監督のノスタルジー作品なのだ。
アルフォンソ・キュアロン監督の「ROMA」、
ケネス・ブラナー監督の「ベルファスト」など、
映画作家の半自伝的映画の一つ。
描き方もユニークで、
一応アニメなのだが、
実際に俳優を使って実写で撮影し、
それをロトスコープという技術で、
アニメに変換したもの。
だったら、実写で公開したらいいようなものだが、
霧の彼方の記憶を描くのだから、
アニメにした方が良いという判断だろう。
リンクレイターは、前にも、
「スキャナー・ダークリー」「ウェイキング・ライフ」という、
ロトスコープを使った映画を撮っている。
なにしろ、50年も前の話だから、
学校には体罰があるし、
人種差別も当然の時代。
それでも、ヒッピー文化は
田舎の町にも押し寄せて来る。
テレビが居間の真ん中に置かれ、
家族揃ってテレビ番組を楽しむが、
テレビは1台しかないから、
兄弟でチャンネル争いが起こり、
テレビのSFやホラーやコメディが
生活の中に入り込んで来る時代。
「ダーク・シャドウ」「宇宙大作戦」「スパイ大作戦」「トワイライト・ゾーン」・・・。
技術の躍進による未来に対する漠然とした希望があった時代のワクワク感。
そして、家族は、アポロ11号の月面着陸を
8人家族で揃って見ることになる。
それより以前に息子が既に月に行ったことも知らずに・・・
肝心のスタンは中継の途中で眠りこける。
まあ、しかし、そんな実験があるはずもなく、
アポロ10号1/2というのは、
スタン少年の妄想の産物らしい。
アポロ計画が終わって既に48年。
人類は月にわずか12名の宇宙飛行士を送り込んだだけで、
月への移住も果たせずにいる。
最近、アポロ計画の再開が報道されているが、
人類が他の天体に移住するのは、まだ夢だ。
回想形式なので、
成人したスタンの声として、
ジャック・ブラックが声の出演をしている。
Netflixで配信。
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