[書籍紹介]
「ひとかりうど」と読む。
長崎尚志による警察小説。
郊外の森林公園で散歩中の犬が
尖った凶器(後でボウガンと判明)で殺された死体を掘り起こす。
その捜査に従事していた神奈川県警捜査第一課の桃井小百合は、
県警本部に呼び出され、
迷宮入り事件を専門に捜査する特命中隊の
赤堂栄一郎警部補と組むように指示される。
赤堂は“神の手”と呼ばれ、検挙率は群を抜いていたが、
金まわりが良く、
闇の勢力とつながりのある汚職刑事の疑いがかけられていた。
桃井はそのお目付け役として配置されたのだ。
過去の類似事件を調べる中、
赤堂はその才能を発揮し、
過去の事件の推理から、
複数の遺体が埋められている場所を発見する。
遺体の身元を洗うと、
凶悪事件の犯人ばかりで、
どうやら、闇の仕置人集団が存在するようなのだ。
この本筋の話に並行して、
かつて妹を強姦惨殺された男・黒川の
出所した犯人たちへの復讐殺人と
ホテル・キンブルでの潜伏生活が描かれる。
ホテルの名前は、
アメリカの連続ドラマ「逃亡者」の主人公、
リチャード・キンブルから取られ、
逃亡者をかくまう目的で運営されていた。
更に、過去にさかのぼり、
突然母を失った少年が、
反社勢力と互角に闘う弁護士の祖父に養われ、
母が殺された真相をつきとめようとする姿が描かれる。
この少年が後の誰であるかは、
小説の3分の1あたりで明らかになる。
話は、GHQ支配の置き土産や
神奈川県で起きていた神隠し事件へと
謎はどんどん広がり、
3つのストーリーが一本に織り合わさった時・・・
というわけで、闇の深さ、広がりは大きいが、
途中で、戦後から続く
狂気の人狩り集団の結社に辿り着くという、
常識ライン点を通過し、
現実味を損なう結果となった。
「戦後からいままで、
国家にとっての危険分子や逃亡中の犯罪者、
娼婦などをひそかに誘拐して、
ハンティングでもするように
人を処刑している秘密結社があります。
彼らを一網打尽にしたいんですが」
と、黒川はおとりになる。
そして、米軍払い下げ地の中で
そのハンティングが行われる。
だったら、死体の隠し場所も払い下げ地の中にしたらよかっただろうに。
まして、最後にあんな人物が突然登場とは。
失踪者捜索の間に、
別々な人物が同一人物だと判明したり、
その関係者の裏切りなど、
面白いところもあったのだが・・・
ホテル・キンブルの潜伏生活での
ホテルの対応も興味深い。
あんなホテルがあるとは知らなかった。(あるはずないか)
少年が警官を志した時、
祖父がこう助言する。
「ふまじめで隙があって悪に寛容で、
人を舐めてる感じだが、
じつは仕事ができるみたいなキャラクター」
赤堂はそういう設定だ。
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