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ドラマ『64<シックス・フォー>~陰謀のコード~』

2024年11月22日 23時00分00秒 | 映画関係

[ドラマ紹介]

日本でも映画化、ドラマ化された
横山秀夫の小説「64(ロクヨン)」
イギリスで再映画化したドラマシリーズ。
WOWOWで放送。
全4話3時間2分

映画化と言っても、
すこぶる換骨脱胎

換骨脱胎・・・骨を取り換え、胎盤を奪うという意味で、
   外形は元のままで、中身を変えることをあらわす。
   転じて、先人の詩や文章や著作の
   着想・形式などを借用し、
   新味を加えて独自の作品にすること。
   そっくりそのまま盗用する「パクリ」とは違い、
   先人の作品に敬意を持ち、
   良い部分を活かしつつ
        新しいもの生み出していくもの。

換骨奪胎の度合がものすごく、
ほとんど原型を留めていないので、
比較するのも虚しいが、
主なものを示す。

「64」の意味は、
わずか7日間で幕を閉じた昭和64年(1989年)に、
D県警管内で起こった7歳の少女誘拐・殺害事件が未解決のままで、
符丁として「ロクヨン」と呼ばれているのだが、
年号などないイギリスで、どう扱われるのかと思っていたら、
過去のスコットランド独立に関する
政治的工作のコードネームという設定。

主人公の刑事・三上の広報室での
警察発表を巡る報道陣との軋轢、
警察庁長官の視察を巡る葛藤も、
日本独特のものなので、
その部分は全面カット。

三上の娘・あゆみが、
父とよく似た醜い自分の顔を憎むようになり、
整形を反対されたために家出してしまう、
というのは、
スコットランド、グラスゴーの警官
クリス・オニールと妻ミシェルの娘が失踪して3週間、
娘の失踪に本当の父親の犯罪者が絡んでいると思いこんだ妻は、
ロンドンに出かけて、その犯罪者に会う、
という展開になる。
娘が荷物を取りに戻った時、
クリスは娘と会い、
本当の父親がクリスではないと知った娘が
「両親に騙されていた」と怒って家出した、
と変えられている。

自宅にかかってきた無言電話があゆみからのものではないかと
美那子が気に病むが、
この無言電話は、管内の各家庭にかかっており、
実は、64年の事件の被害者の父親が
脅迫電話の声を聞いており、
その声が誰かを確かめるために、
電話帳の順番にかけていたもの、
と判明する。
これも全面カット

新たな誘拐事件が起こり、
犯人から要求された身代金を運ぶ父親の車を追う、
という下りも全面カット。
イギリス版でも誘拐は起こるが、
実は前の事件で法務大臣が関与していて、
その法務大臣の娘アナベルが誘拐される。
アナベルと親しかった高校教師が疑われ、
尋問の場で、昔の誘拐事件に
法務大臣が関与していたことが判明する。

64年の事件時、
脅迫電話の録音ミスにからむメモは、
脅迫電話があった事実の隠蔽に、
捜査担当だったクリスの兄フィリップが
関わっていたという疑惑に発展する。
脅迫電話の事実を知っていた刑事が殺され、
その犯人とされ、刑に服した男をクリスが尋ねて、
昔の誘拐事件のいきさつを知る。

その殺された刑事の同性の愛人の警察官が
被害者の父親と結託して
法務大臣を追い詰めるが、
スナイパーに殺され
真実は闇の中に封印される。
法務大臣は党の副党首になる。

アナベルを救い出すのはいクリスで、
人里離れた農場の家で
ついにアナベルを見つける。

というわけで、
① 主人公の刑事の娘が失踪する。
② 管内に昔の失踪事件が未解決事件として残っている。
③ 失踪事件の遺族の父親が
  犯人を追い詰めるために、娘を誘拐する。

という3点だけ残し、後は全部新たな創作。
つまり、「ロクヨン」の原作なしに、
話は成立する。

想像するに、「ロクヨン」の映画化権を取ったが                  脚色の段階で、多くのカットが生じ、
原型を留めなくなったため、
なんだ、映画化権料払っただけ、損しちゃったね、
ということではないか。(想像です)
                                        「ロクヨン」のドラマ化ということがなければ、
ちゃんと見れる内容なので、
その点で損をしている。

「ロクヨン」のキモは、
①子供の遺族の父親が、市内に順番に無言電話をかけて
 犯人の声を聞こうとする。
②それで判明した犯人の娘を誘拐(実は違うのだが) 
 したとして身代金を要求し、
 64年当時と同じルートで金を届けさせる。
という2点なので、
それを外したドラマ化は、
もはや原作とは言えないのではないか。
ドラマを観た横山さんは、何と言ったのだろう。
                                        なお、「64(ロクヨン)」は横山秀夫の最高傑作で、
『2012年週刊文春ミステリーベスト10』や
『このミステリーがすごい!2013年版』で
第1位を獲得するなど、国内のミステリー賞を総なめにした。
2015年にはNHKでドラマ化(主演・ピエール瀧)、
2016年には前・後編の二部作として映画化(主演・佐藤浩市)された。
ドラマ版は原作に忠実だったが、
映画版はラストが改変されている。



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