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小説『明け方の若者たち』

2025年01月18日 23時00分00秒 | 書籍関係

[書籍紹介]

以前、「ブルーマリッジ」を紹介した際、
「有望で、やがて直木賞を受賞するだろう」
と書いたカツセマサヒコの長編第1作。

著者は、大学卒業後、
一般企業への就職を経て、
趣味で書いていたブログを機に
編集・ライターとして編集プロダクションに転職、
その後、独立
140字の投稿がTwitter のタイムラインを賑わせ、
若年層から絶大な人気を博す。
幻冬舎より小説執筆の依頼を受け、
2020年本書を刊行して、小説家デビューした人物。
ラジオのパーソナリティもつとめている。

主に二つの主筋で成り立つ。
一つは、大学の飲み会で出会った「彼女」と「僕」の恋愛
もう一つは、就職して、
「こんなハズじゃなかった」と
現実と理想との乖離に苦悩する日々。

すごく好きになって関係を持った女性が
実は既婚者だったと判明し、
長期海外赴任の夫が帰って来たことから、
三年半の付き合いの末、
別れることになって、
鬱々となる。
別れてみて、
こんなに好きだったんだと、自分自身でも不思議な気持ちになる。

仕事面では、印刷会社に就職して、
クリエイティブな仕事をしたかったのに、
総務部に配属されて、
何も生まない仕事に倦んでしまう。
「この会社じゃなくても良くなっちゃった」
同期で優秀な同僚の尚人との友情も育む。

20代前半の男子が陥るのようなもので、
もう少し歳が行くと時間が解決してくれるような課題。
多くの年長者が、
そんな時代もあったかなって思い返しながら読むだろう。

イチローでも本田圭佑でもないくせに
変な野心を持ってしまった僕らは、
こんなハズじゃなかった人生に振り回され、
ようやく諦めたときには、
周りからせいせいした表情で
「大人になった」と言われて生きていくのだろう。

時間はたくさんの過去を洗い流してくれるし、
いろんなことを忘れさせてくれる。
でも決して、巻き戻したりはしてくれない。
不可逆で、残酷で、
だからこそ、その瞬間が美しい。

23、24歳の生活を
「人生のマジックアワー」だと表現する。
著者はこの本を書いた時、34歳。

2021年に北村匠海の主演で映画化された。

 



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