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映画『疫起 エピデミック』

2023年08月28日 23時00分00秒 | 映画関係

[映画紹介]

台湾で4月14日に公開された作品を
早くもNetflixで配信。

エピデミックとは、
パンデミックよりももっと狭い範囲の
地域で感染症が広がる状況をいう。

台湾の総合病院の胸部外科主任の夏正は、
勤務時間を終えて、
5歳になる愛娘の誕生日のために帰宅を急ぐが、
タクシーの中で急患対応の連絡を受け、
仕方なく病院へと戻る。
手術を終えた夏正が帰宅しようとすると、
病院全体が突然封鎖され始めた。
未知のウィルスによる病気が発生したのだという。
病院内にいた一般患者も病院から出ることが出来ず、
1000人の人々が病院に留め置かれる。
感染を恐れた看護師らは、
部屋に籠城し、医療行為をしようとしない。
上層部にかけあって帰宅組に入れてもらった夏だったが、
感染患者の手術の執刀を申し出る。
しかし、体温が上がり、夏自身も感染の恐れがあった・・・

これに並行して、
国境なき医師団に参加しようとする研修医と看護師の恋、
感染源を突き止めてスクープを取ろうとする記者、
夏の忘れ物を届けに来て、
病院封鎖に巻き込まれた人の良いタクシー運転手、
看護師長の母に会いに来て、
隔離のため会えないまま母の死を迎える幼い少女の話
などがからむ。

疫禍発生により閉鎖された病棟を軸とする群像劇で、
新型コロナの話かと思えば、
そうではなく、
2003年のSARS(新型肺炎)の時に、
実際に起きた総合病院封鎖を元に作られた作品。
しかし、観る側はどうしても新型コロナと重ねてしまう
というか、それを意図して作られた作品だろう。
未知の病気に対する恐怖は同じで、
新型コロナの時も
死を省みない医療従事者の行動が注目されたが、
それと全く重なる。
絵空事のパニック映画ではなく、
この数年間の不安に満ちた生活の記憶が蘇る。

未知のウィルスへの恐怖。
感染のリスクにさらされ、
システムが崩壊しつつある院内に残された人々が、
自分を守るべきか、それとも他人を救うべきなのか悩む姿。
感染のリスクを冒さねば職務が果たせない
最前線での医療従事者の苦悩が
見事に描かれる。
特に帰宅出来る夏が、
感染妊婦の胃穿孔と帝王切開の同時手術にあたり、
医師の安全優先を言い募る会合の様子を廊下で聞き、
迷った末に帰宅を諦め、
手術に名乗りをあげる場面が感動的。
また、研修医がSARSに感染して隔離される中、
他の患者の危機を救うべく頑張る姿も胸を打たれる。
研修医の恋人の看護師が
感染を恐れて立てこもっている看護師たちのドアを叩き、叫ぶ。
「隠れてないで出て来て、仕事してよ。
人の命を救うのが仕事なのに、何が看護師よ。
医療に危険を付き物よ。
私もウィルスは怖い。
それでも人助けをする。
命を救うのが仕事だもの。
仲間は不眠不休で闘っている。
大勢の病人が救いを求めているのよ。
部屋にこもって何もしないなんて。
隠れて恥ずかしくない?」

今、観ることに意味のある作品である。

監督は林君陽(リン・ジュンヤン)、
主人公の夏正を王柏傑(ワン・ポーチエ)が、
記者を薛仕凌(シュエ・シーリン)、
研修医の李心妍をクロエ・シアン
看護師・安泰河をツェン・ジンホアが演ずる。
脚本家のリウ・ツンハンは、元々ER(救急外来)の看護師。

先の台北映画祭で最優秀監督賞、最優秀主演男優賞を獲得

 



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