カエサルの世界

今年(2019年)1月中旬から「休載中」ということになっているのだけど、まあ、ときどき更新しています。

●加速装置をつけてみました。

2016年04月01日 | ☆与太話     

 実は、今年の初めに、加速装置をつけてみました。
 スイッチは、奥歯の内側です。舌で操作します。左の下奥歯がオンで、1回押すごとに2倍・4倍・8倍・・・になっていきます。128倍まで上げることができます。右の下奥歯はオフです。
 装置をつけた後、とりあえず、スイッチを入れてみました。何て言うか、世界がグニャリと変わる感じです。
 机の上にあったボールペンをつまみ上げようとして右手を伸ばしてみたのですが、自分の体の動きがもどかしく感じられます。でも、ふだんより速く動いたんだと思います。
 加速モードになると意識のスピードが上がり、すべてのものがゆっくりと動いているように感じられます。自分自信の体も例外ではありません。
 つまみ上げたボールペンを落としてみました。およそ1メートルの高さから床に達するまで約0.4秒。そのこと自体は変わらないわけですけど、その様子がスローモーションのように見えます。
 落下中のボールペンを捕まえようとして左手を伸ばしてみたのですが、思うように体が動かず、キャッチすることはできませんでした。でも、練習すればできるような気がしました。
 加速モードに入ったとき、自分の体の動きがぎこちなくなるということは予想していた通りです。カエサルとしてはいつもと同じように動こうとしているだけなんだけど、手足の筋肉にはいつもの2倍の速さで動くように命令が行くことになります。でも、カエサルの筋肉はそんなに速く動けません。感覚と運動とが二重にズレるんですね。こうしたことについては、慣れていくしかないと思っていました。
 立ってみたり、座ってみたりしました。歩いてみたりもしました。
 体が動くことは動くし、やろうと思ったことはできるんですけど、何ともヘンな感じです。思うように動かずもどかしいと感じることもあるし、速く動きすぎて驚いてしまうこともあります。
 そうこうしているうちに、体を動かすコツがだんだんわかってきました。いつもと同じように動こうとするからいけないんですね。いつもよりゆっくりと動こうとすればいいのです。
 そのことに気づいてからは、けっこうスムーズに体を動かせるようになってきました。そんなに難しいことではありません。のんびり、ゆっくり動こうとすればいいだけの話です。それで、ふつうに動くことができます。
 かれこれ30分ほどしてから、スイッチを切りました。
 いつもの世界がグニャリと戻って来ます。疲れたと言えば、けっこう疲れました。そのせいもあるんでしょうけど、体がうまく動きません。ゆっくり動こうとすることに慣れてしまったんですね。
 加速モードを切ったのだから、ゆっくり動こうとしたらゆっくりとしか動きません。あたりまえの話です。ふつうに動こうとすればふつうに動くわけですけど、その切り替えがうまくできません。
 こういうのも、慣れるしかないんだろうと思いました。


 1週間足らずで、日常生活には支障がなくなりました。
 1ヶ月もすると、かなり上手に動けるようになってきました。
 その後は、日々刻々と修業を続けているという感じです。いろんなことができるようになっていますけど、どこまでできるようになるのかは、ちょっと想像がつきません。 
 体のトレーニングも始めています。
 今の体力でもかなりの動きができるんですけど、筋力を強化すれば、もっとすごい動きをすることができることになります。そういうことを実感できるだけに、怠け者のカエサルとしては珍しくがんばっています。還暦が近いし、若かりし頃の体力を取り戻すというわけにはいかないんですけどね。
 ときどきバッティングセンターに行きます。
 バットを手にするなんて何十年ぶりだろうという感じで、バットを振ることさえろくにできなかったんですけど、だんだん慣れてきました。ボールは止まっているかのように見えるので、自分の体を上手に動かせれば打ち返すことができます。加速装置のことは秘密にしておきたいので、わざと空振りしたり、わざと凡打したりもしています。
 体には、動かし方というものがあります。
 たとえば、椅子から立ち上がるとき。上体を前屈みにしながら腰を上げ、上体を起こしながら腰や膝を伸ばします。その間、右足をちょっと引く、左足に力を入れる、右足を揃えるなどということもします。
 加速モードに入っていると、ふだんは無意識のうちにやっていることを、体を動かしている最中に感じることができます。よりスムーズに動くためにどうすればよいかということを考え、体の動かし方を調節していくと、たいていのことが上手にできるようになっていきます。
 格闘技を習いたいという気持ちはあるんですよ。指導を受けたいというわけではないのですが、練習相手・対戦相手が欲しいんですね。相手の動きを見切るという自信はあるので、それに上手に対応すれば、相手に勝つことができると思うんですよ。
 でも、誰かと一緒に練習するということになると、加速装置のことがばれちゃうような気がします。それで、本を読んだり、ビデオを見たりしながら、独学で修業を積んでいます。
 加速装置は、体を動かすときにだけ役立つわけではありません。
 たとえば、これまでの何倍ものスピードで本を読むことができます。本を読むようなときは、加速モードによる弊害のようなものがほとんどないので、最高速の128倍を使うことができます。ふつうに1ページを読むのに2分かかるとすると、128倍速では1秒もかからないということになります。1冊の本を読み終えるのにほんの数分しかかかりません。そういうところを誰かに見られたとしたら、ただページをめくっているだけのように見えると思います。
 もちろん、実際の時間は数秒間でも、カエサルの意識としては何時間もかかっているわけで、難しい本を読み続けるのは疲れます。
 音は、ゆっくりと、かつ、低く聞こえます。
 最初は、聞き取れなくて困りました。人の言葉がわかりづらいというだけではなく、パソコンなどから出る音とか、物が動いたときに出る音とかが何の音だかわかりませんでした。でも、これも慣れですね。4倍速か8倍速くらいまでなら、聞き取れるようになりました。
 どんな早口でも聞き取れるので、英会話が少し理解できるようになってきたという気もします。複数の人が同時に話しているのを聞き分けることもできるようになってきました。
 加速モードでは、音楽をそのまま楽しむということはできません。ピアノの練習をしてみて、弾けることは弾けるようになったんですけど、気分は盛り上がりません。
 でも、ビデオなんかを早送りにするとちょうどいいです。今、動画を32倍速で再生できるというソフトを愛用しているんですけど、便利です。2時間くらいの映画だと、4分くらいで見終えることができます。
 この他にもいろんな話があるわけですけど、カエサルの加速装置についての話はこれくらいにしておきたいと思います。


 今回の記事の画像は、写真などをトレースして描いたものです。
 1枚目は、アルフレッド・ベスター「虎よ、虎よ!」のガリヴァー・フォイルです。初めて「加速装置」をつけた人と言ってよいと思います。「奥歯にスイッチのある加速装置」としても、彼が元祖ということになります。
 元画像は、1978年に刊行されたハヤカワ文庫版の表紙、昨年お亡くなりになられた生頼範義さんの作品です。
 2枚目も、ガリヴァー・フォイルです。
 元画像は、2008年の新版での表紙、寺田克也さんの作品です。
 3枚目は、石ノ森章太郎「サイボーグ009」の島村ジョーです。「奥歯にスイッチのある加速装置」を有名にした人ですね。
 元画像は、JR石巻駅にある実物大フィギュアです。
 カエサルが加速装置のことを知ったのは「サイボーグ009」です。50年以上も前の話になります。でも、加速装置というものがどういうものなのかはよくわかりませんでした。
 その10年後くらいに「虎よ、虎よ!」を読んでみたわけですけど、加速装置というものについてはよくわからないままでした。この頃は、高校物理で学習した「加速度」という言葉との混同もあったような気がします。
 昨年末あたりから、なぜか「加速装置」のことが気になり始めました。数十年前と比べるとある程度のことは理解できるようになったつもりでいたんですけど、わからないところはわかりません。
 そこで、カエサル自身の体に加速装置をつけてみて、実際はどのようなものなのかを確かめてみようと思ったわけです。


 1年は365日あるわけですけど、その中に何日か、カエサルにとって特別な日というものがあります。第1位は3月11日で、第2位と第3位は大晦日と元旦、第4位と言ってもいいのが4月1日です。
 ブログでは、特別なことを書かなくちゃいけないと思ったりします。
 今年は、書きかけの小説をアレンジして、主人公をカエサル自身ということにして、記事に仕立ててみました。
 3年前に退職してからは、ときどき小説を書いています。書き上げたことは一度もなくて、書きかけ・・・というか、書き始めたところで終わっちゃうことが多いんですけどね。それでもけっこう楽しいです。
 今回の加速装置の話は、「四畳半SF」と考えています。
 ガリヴァーフォイルも、島村ジョーも、加速装置を使って敵と戦うわけですけど、そういうのじゃなくて、平凡な一市民に加速装置がついたら、日常生活の中でどのように使うのか・・・という話を書いてみたかったのです。
 そういうのを、カエサルは「四畳半SF」と呼ぶことにしました。もっとも、いまどき、四畳半のアパートなんてめったにないと思うので、「1KSF」の方がいいですかね(笑)
 四畳半であれ、1Kであれ、SFであることに変わりはありません。そのことについては、けっこう気にしています。「加速装置」という設定は荒唐無稽であっても、できるだけ具体的なものにしたいと思っていました。その後の展開については、最初の設定から演繹されるような形のもの、論理的に整合性のあるものにしたいと思っていました。
 でも、無理を通せば道理が引っ込むという感じで、あちこちに矛盾が出てきてしまいます。整合性をもたせるために書き直しをし、基本設定を変えたりもするわけですけど、キリがありません。
 小説・・・っていうか、創作をするっていうのは難しいですね。
 何をどう書いてもいいので選択肢がいっぱいあることになるわけですけど、どっちに行っても行き止まりになっちゃうし、行き止まりになる前に引き返したくなっちゃうし、なんか、迷路の中で彷徨しているような気分になったりします。たいていの場合、そうしたあたりで書くのをやめちゃうわけで、「書き始めただけの小説」がズンズンと増えていくことになります。
 でも、この話はけっこう気に入っているので、加速装置というものが実感できるような文章に仕上げて、かつ、きちんとしたオチもつけて「作品」として完成させたいと思います。ここで、そう宣言しておきます。
 もちろん、4月1日限定での宣言ですけどね(笑)


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