太陽
おすすめ度
原題:Solntse
制作:2005年 ロシア
制作:イゴール・カレノフ アンドレイ・シグレ マルコ・ミュラー
監督・撮影:アレクサンドル・ソクーロフ
脚本:ユーリ・アラボフ
出演:イッセー尾形 ロバート・ドーソン 佐野史郎 桃井かおり つじしんめい田村泰二郎 ゲオルギイ・ピツケラウリ 守田比呂也 西沢利明 六平直政
アレクサンドル・ソクーロフ監督の「太陽」です。これ、ずーっと観たくて。この度やっと観ることができました。この作品、本来なら日本で撮るべき内容なのでしょうが、自国だからこそ難しい、デリケートなテーマですよね。
1945年終戦直前。地下防空壕で天皇裕仁(イッセー尾形)が朝食を摂るシーンからはじまります。ラジオからは劣勢の戦況が伝えられ、天皇はそれを止めるよう侍従役(佐野史郎)に伝えます。御前会議で終戦を示唆する発言をした後、研究所での生物学研究に没頭する天皇。間もなく終戦を迎え、いよいよマッカーサーと対面することとなります。
昭和天皇が実際にどんな仕種なのかあまり記憶がありませんが、あのゼスチャーはそっくりなんだそうです。私は、オーバーリアクションなんじゃなかな?と感じていたですが。どちらにせよ、イッセー尾形の演技は素晴しかったです。「あ、そう。」という口癖。その短い相槌言葉の中に色々な気持ちが込められています。時折コミカルな描写があり、多少の違和感は感じますが、天皇の悲哀・苦悩がひしひしと伝わってきました。「現人神」と奉られ、敗戦後には「人間宣言」。天皇自身、時代に翻弄され、波乱の人生を強いられたひとりだったんだと改めて実感しました。「ひとりの人間としての天皇像」を描いたアレクサンドル・ソクーロフ。この作品を観ることが出来てとてもうれしく感じます。
限りなくモノクロに近い独特な映像、戦火の表現も秀逸です。この作品を観て、ヒトラーを描いた「モレク神」、レーニンを描いた「牡牛座」も是非観てみたいな、と思いました。
・太陽@映画生活
・前田有一の超映画批評