茶の湯 徒然日記

茶の湯との出会いと軌跡、お稽古のこと

利休百首9 何にても

2008-06-18 08:13:24 | 利休百首
9.何にても置き付けかへる手離れは 恋しき人にわかるると知れ


 8首目の「何にても道具の扱ふたびごとに 取る手は軽く置く手重かれ」に付け加えるように、道具から手を離す時は、恋人と別れる時のように余韻を残すとよいとしている。
 確かにさっと手をひっこめてしまっては、道具にぶつかって粗相をする可能性もあるし、ゆったりと手を離すと道具や点前に重みが感じられる。人のお点前を拝見していると、ちょっとしたことで、点前の雰囲気というのは変わり、美しいなあと思ったり雑だなあと感じたりするものです。

 井口海仙先生は、続けてこうおっしゃっておられます。
引用***
武芸に「残心」という言葉がある。敵を倒して、すぐ刀を鞘に納めるのではない。刀をさげたまま、敵を見つめつつ、五、六歩退いて、さて鞘に刀を納める。この心構えを「残心」と称するのだ。
 茶の湯の点前にも、この残心の心構えが必要なのである。道具の扱いだけではない。茶事が終わり、客を送り出して、さて釜の前に座り、ひとり茶を点てながら、今日の茶事について反省する、これが茶人の心得と教えられているが、これも恋しき人に別れる気持ちであり、残心でもあるのだ。
*******

 時代劇で、剣士が相手を倒した後に、ゆっくりと鞘に刀を納める風景は何度となく見たことがあります。お互いが競い合ったり、尊敬しあったりする関係であれば、全てが決まる一時の真剣勝負の後の残心はより大きいものとなるのでしょうね。特にもう二度と会うことができない、生死にかかわることなので、一層深い思いが巡るのだろうと想像します。
 茶事も一期一会の真剣勝負、お互いの気持ちが通い合ったのかどうか、全てが終わった後に一人考える時間というのは、味わい深いものだろうし、1回1回に異なった残心があるのだろうと想像します。

 道具を大切に扱い、しっかりと定座に据えること、簡単なことのようで、いつの間にかいい加減になり、自分の癖がついてしまっているようにも思います。意識して直し、最後にはそれを意識しなくても自然に正しい姿ができるようになりたいものです。
 最近、小習を勉強する時は、細かい所作や手・腕の動きを繰り返しお稽古します。ちょっと肘をはったり、手首を伸ばすだけで見た目の印象ががらりと変わるのを感じます。何にも思いを馳せるということは大切なことなのでしょう。
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4 コメント

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残心 (ぶり)
2008-06-18 22:19:39
斬新な響き♪(オヤジギャグすみません(^^;)
たまご様ほどの方でも、小習いは重要なのですね。
初釜で初心に帰ってお稽古をと願い出て、こまごましたこと、先生の教えを乞うています。フクサや柄杓の扱いばかりでなく、足の運びなども含めた身体の動き全部について、「動かす時は動かす、止める時は止める」これが課題です。きっと、いつかできるようになるだろうと希望を持って。(^^)
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残心 (m-tamago)
2008-06-20 21:13:18
ぶりさん、こんばんは。
斬新と打つと、残心とは変換されませんよねえ。うふ。日本の”道”とつくものにはやはり同じ精神が流れているのですよね。

小習いは上の点前を習ったからこそ益々重要と感じるようになりました。結構いい加減なまま流してきてしまった部分も多いので、なるほど、そうだったか、と改めて今勉強し直している感じです。

「動かす時は動かす、止める時は止める」
これが簡単なようで簡単でない。緩急ある味わいのある美しいお点前になるよう日々精進するのみですね~。頑張りましょう。
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恋しき人とと分かるる時 (山桜)
2008-06-21 17:11:04
お茶から離れて日常のことですが、毎朝家族が出かけるのを
見送る時、無事を祈って姿が見えなくなるまで見届けたり、
配達の方が玄関を出られても、足音が遠のくまで待ってなるたけ
音を立てないようにロックをしたりと「残心」のひと時は色々と
ありますね。 私はそのひと時が結構好きなのです。
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恋しき人と分かるる時 (m-tamago)
2008-06-27 10:36:08
山桜さん、こんにちは。
なるほど、日常の中にも残心というのはありますね。相手は気付いていないけど、見送っている、見送られる、そんな関係ってとても素敵だと思います。そんな気持ちを日常でも忘れない自分でありたいです。
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