『茶遊庵』の生徒も濃茶のお稽古に入る方が多くなってきました。
薄茶は神社仏閣やイベント、カフェ、自宅でも頂く機会がありますが、
基本的に、濃茶は茶道を習わない限り、口にすることはほぼない、
一種特別な領域、ワンランク上のレベルに入ることになります。
指導するにあたり、まずは濃茶を入れる器、茶入の扱いから入ります。
濃茶入は薄茶器と違って、仕覆という着物(洋服?)を着ています。
仕覆は、茶入の持ち主が変わるとその方のお好みで新たに作られることもあり、
茶入によってはいくつも仕覆が添っているといったものもあります。
それだけ大事に扱われて、愛されてきた証拠でもあります。
仕覆には紐がついていて、それを結ぶのですが、
中に濃茶が入っているか、空っぽかで、紐の結び方が違います。
姿をみただけで、お茶が入っているのか入っていないのかが一目瞭然というわけです。
空の時は、紐が傷まないように柔らかく結ぶ(絡ませる)という、
先人の智恵も感じられます。
更に仕覆の扱い方があったり、帛紗での茶入の清め方もまた薄茶とは異なります。
学ぶ側にとっては覚えることがまた増えるわけですが、
難しいとあきらめるのではなく、積極的に繰り返す姿が印象的です。
ある生徒は、自宅で練習したいからと茶入を早速購入したそうです。
濃茶を初めて学んだ頃の私にはそんな熱心さはなかったので、
教える側としては驚くやら、嬉しいやらで、
私自身も益々精進しなければと思いを新たにしております。
初めて自分で練った濃茶を口にした感想は、
小学生 「苦い、あまり美味しいとは思えない」
大人 「結構濃いんですね」「ん~?薄茶の方が美味しい」などなど
濃茶も飲みなれてこそ、また、美味しい濃茶を頂くと感想も違うかなと思いますが。
いずれにしても、人生初の味わい。
「薄茶三年、濃茶十年」という言葉もあるように、
濃茶を美味しくほどよい具合に練り上げるには鍛練が必要です。
茶道の世界は、これまで先生や先輩を見てまねて、時間をかけて覚えていく、
ある時、点だった知識が繋がって世界が広がっていく、というのが主流だったと思います。
私自身もそういう環境でしたし、それはそれでとても素晴らしい時間を過ごしました。
点と点が繋がって線になり、面になっていくときの感動は、忘れられません。
あの時、この知識を得ていたら、もっと早く点が繋がって、
茶道に嵌ってもっと熱心に学んだのに、と思うところも多くあり、
『茶遊庵』の生徒には、気づきを速めて茶道をより楽しんでもらうため、
今習っていることがどんな意味があるのかを説明しながら
お点前のお稽古を進めるようにしています。
茶道の所作のひとつひとつ、細かい扱い、どうしてそうなるのかという理由、
意味を知ると、茶道ってよくできていると感心が深まって、
もっと知りたくなっていくと思うからです。
これまで『茶遊庵』は初心者が多かったため、全員プライベートでお稽古を重ねてきましたが今年から薄茶平点前までできるようになった方は、グループでのお稽古に
変更していく予定です。
全くの初心者の方にはプライベートでのお稽古カリキュラムを考案しているところです。
ゆくゆくは茶道経験者の方はグループ稽古から入会できるようにします。
茶道は最終的には主客あって行うもの、人間関係の勉強でもあります。
様々な方のお点前を見たり、主客のやりとりを経験することで、
お点前が上達するのは勿論のこと、
人や自然との柔らかで上品な接し方を身に着け、心の平安を得ることができ、
人間としての幅が広がるはずです。
『茶遊庵』の生徒がより充実した茶道ライフを送れるよう
カリキュラムやクラス編成も考え、進化させながら進みます。
茶道って本当に奥深いし、楽しいですよ。
是非ご一緒に茶道を楽しみましょう。