復路は南峰から坊ガツルに急下降し、九州自然歩道を通って雨ヶ池を経由し、長者原に戻った。
黄色いラインが、今回の全行程、休憩含めて往復7時間。三俣山をぐるり一周した。
「現在地」とある地点から、長者原までは約1時間。広大な「自然歩道」。
(左下)おりてきた坊ガツルから南峰を見上げるとこんな感じ。あのくぼみのところを降りてきたんだな。
(右下)中腹でひと休み。
(左下)南峰中腹から坊ガツル方面。 (右下)南峰中腹から下ってきた道を見上げる。
多少、勾配がきつくてもそれは平気だった。でも中腹あたりで、急勾配というより「崖」の箇所がいくつかあり、
背の小さい私は、思いきり手を伸ばしてぶら下がっても地面に足が届かない。
手を滑らせて転がれば最後、切り立った崖から眼下に拡がる麓まで、簡単に落ちていくと思われた。
先日、阿蘇でひき馬のおじさんが、草千里にある小さな外輪山の登山について話していた言葉を思い出した。
「こちらから登れば30分、下りは20分。でも向こうから下ると7秒で下りられる。下りると言うか落ちると言うかな(笑)」
それまでぜんぜん平気だったのに、一度 「怖い」 と思ってしまうと身がすくんで、右にも左にも足が出なくなってしまう。
いちばん大変だったその部分の写真は、大変だったので、ないです。撮る余裕がなかったから。
でも怖くても、足をだすしかない。ここに座り込んでいるわけにいかないのだから。
何か所かあるそういう崖をクリアすれば、あとはひたすら急勾配の森林を滑り下りるようにして下っていく。
急斜面にたつ木々たちが丈夫な枝を持っていることがとても助かる。
急斜面のため、手を放すと止まらずに落ちて行くので、木につかまりつかまり、次はあの木まで、その次はあの木まで、と決めて、
ととととと、と走り下りて行く。 そうして、目標の木の幹にぶつかるというか、抱きつくようにして、とまる。
そういうとき、「次はそっちにいくからよろしくね。どうか受け止めてね」 と木にお願いしてから、ととととと、と向かっていく。
私がどん とぶつかってきても、「あの木」と決めて体当たりした木は、細く見えても、すこしもびくともしない。
体をはって受け止めてくれる感じがして頼もしい。
でもこんなふうに自然と会話しながら歩いるからといっても、一歩間違えば、あるいは不可抗力で、「死ぬ時は死ぬ」 と思う。
けして自然は私達を、両手をひろげて包んでくれるわけじゃない。立場はどこまでも対等で、自然は人間に恩義を感じたりしない。
自然を愛しているから、という理由で、自然が命を助けてくれることはないのだ。
でなければ、プロの登山家で命を落とすひとなんかいるわけがないし、海を愛するひとたちが津波で亡くなるはずがない。
「死ぬ時は死ぬ。」 それが事実で、以前は山で 「もしここで死んでもそれはそれで構わないな」と思っていた。
でもなんだか今は、「ここで死ぬわけにはいかない」と思うようになった。ちゃんと帰る。
ひき馬のおじさんの話では、ちょっと前に阿蘇で登っていた夫婦の、奥さんだけが滑落死したそうだ。
山では目撃者がいないので、旦那さんは警察から「突き落としたのじゃないかどうか」という取り調べを受けたそうだ。
気の毒な話だけど、言いたいことは、低い山でも一歩間違えば命を落とす危険が常にある、ということ。
私が滑落して死んだら、夫も取り調べられるんだね。「奥さんを憎んでいて、殺したいと思っていた。え?そうでしょう」って(笑)。
坊ガツルに降りればあとは、4.7㎞の九州自然歩道の気持ちのいい森林の中をゆく。
ブナ、ケヤキなどの広葉樹の森で、東北の山と似ていた。
「気持ちのいい森歩き」。 だけど、アップダウンもあって、山を登って下りてきたあとでは結構キツい。足をひきずるようにして歩いた。
(左下)岩から生えている木。
(左下)マツムシソウ。 (右)ヤマラッキョウ。
(左下)アキノキリンソウ。右上から顔を出してる虫さんが可愛いでしょ。 (右下)リュウノギク。
(左下)カシワバハグマ? (右下)カワミドリ。
(下)雨ヶ池の木道。だいぶ陽が傾いてきた。ヘトヘトで、言葉もでない、の図。
三俣山周遊7時間。南峰から下ったことでかなりハードな行程だったけど、手ごたえのある、紅葉のいい山になりました。ありがとう。
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