3月9日(土)晴れ
熊本と宮崎の県境にある国見岳に登ってきた。
国見岳(1738.8M)は祖母山(1756M)、市房山(1721M)と並び、九州中央山地最高峰、
熊本では一番高い山である、ということで、はやる気持ちを抑えきれない朝だった。
ところがどうにも今回の山記事、書くのにテンションが上がらないのだった。
これから登る人が検索してがっかりして国見岳登山をとりやめると困るので先に断っておくと、
テンションが上がらない原因はのひとつは、登る時期にあった。
いくら熊本が2月から暖かいとは言っても、標高が高いだけあって、山の中はまったく新緑もなく、
どちらかというと、「枯れた山」の印象しか残らなかった。
5月に登ったひとのブログをみると、「ブナの森の新緑が気持ちよく、来てよかった!」
と書かれてらっしゃるので、これはまったく季節のミスチョイス。
ガイド本に依ると、4月上旬にはオオカメノキが白い花をつけ、バイケイソウの若芽が開き、山頂にはマンサクが咲くのだそうだ。
冬枯れで、倒木が多く、なんとなく荒廃したような感じの登山道。
東北でも冬の低山はこんな感じだったし、なにもそこまで予想外というわけでもなかろうに。
テンション低いもうひとつの原因は、最近全国ニュースでも話題になっている、PM2.5のせいである。
熊本は数日前に「不要不急の外出を控えるように」という注意報が発令されたばかりで、
この日もけして低い数値ではなかった。
専門家じゃないからわからないけど、なんとなく山の上は町の方より、もっと大変なことになってるんじゃないんか。
それに登山は肺が勝負、というか、思いきり息を吸い込んだりするので、なおさら有害物質を取り込みやすい。
それらの警戒から、普通のマスクじゃなくて、PM2.5を通さないとされる、防塵用のN95というマスクを装着して登った。
東北の災害ボランティア時に使用したので、うちにはこのN95 のストックが大量にある。(下左写真)
山を登りに来ているのに、思いきり深呼吸出来ないというのはどうにも…お察しください。
加えてこの強靭なN95マスク、とても息苦しい。通常の歩行でもかなり息苦しく感じると思う。運動時は尚更。
あまりに苦しくて途中ではずしたりもしたが、明らかに遠くの山は、花粉なり黄砂なり、PMなんとからしきもので
まっしろく霞んでいるので、あまり気持ちのいいものではなかった。
でも黄砂が飛んでくる時期さえやりすごせば、あとはそんなに数値があがることはないんだと思いますよ。
そういうわけで、今回のテンションの低さはたぶん、医学的にどうにか検証したりすれば
血中酸素不足なり、心理学的ななんとかでそれなりの理由がつけられるのかもしれない。
熊本最高峰、東北での登山と併せると、この山で63山め、というなかなかのものであるので、
なんというかほんとはもっと輝かしい感じの記事を書きたかったんだけどね。
低いテンションと酸素不足の中、ひたすら登る。
しかし、まだ冬枯れの山なんだとしても、こうまで山は枯れているものだったろうか。
東北のブナの森は、若芽が芽吹く前の早春の時期、こんなだったろうか。私はどうも違うような気がしてならなかった。
冬枯れではなく、「死んだ」倒木があまりにも多かった。「死の山」という言葉が頭に浮かんだ。
でもそれは時期的なことと、先の血中酸素不足によるものかもしれないので、さしひいて読んでいただければ。
かろうじて日当たりのいいところに緑色の苔が生えているだけで、心底ほっとする。
わずかでも、命の気配を探しながら歩く。
そうしないと、息苦しさもあいまって、ふっと死の世界にひきこまれそうにさえなる。
時々すてきな木を見つけると嬉しくて、抱きついたりしてじゃれてみる。木はどーんと懐が深くて、拒絶しない。
山頂はもうすぐそこ。
山頂は360℃の大パノラマ・・・・だけども、うーん、実際はもっと白く霞んでいて、よく見えなかった。
視界がよければ阿蘇山まで見えるのだそう。きっと4月5月になれば大丈夫だよ。
(熊本県庁のHPで汚染具合を確認の上、登山してください)
そして山頂付近には、まだ新しい鹿のフンが散見された。鹿のフン。鹿・・・鹿の食害。
山頂の手前にわずかばかりの敷地を柵で囲ってあるところがあって、
帰宅後調べてみると、やっぱり鹿の食害から木を守るための柵だった。
冬枯れかと思っていたけど、登山道ではまったく枯れ切っていたクマザサも、
山頂付近にあるこの柵の中では緑色に揺れていた。
鹿さん・・・山ひとつ枯らしちゃうほど食べたらあかんやろ。
そうか・・・九州には熊も絶滅していていないので、やりたい放題なんやね。。。む~・・・
帰りに立ち寄った吊り橋。ね?やっぱり白いよね?
今度来るなら、4月か5月。
そしてマスクをしなくていい日に登ろう。
きっとまったく違う景色に見えるはずだ。はずだ。