♦️904『自然と人間の歴史・世界編』バリ協定(2015、地球温暖化)

2018-10-05 22:10:33 | Weblog

904『自然と人間の歴史・世界編』バリ協定(2015、地球温暖化)

 2015年の国連の気候変動枠組条約締結国会議(COP21)においては、参加各国によりパリ条約が採択された。その中では、まず全体目標が掲げられた。これは、「産業革命前からの世界の平均気温の上昇を二度より十分低く抑(おさ)える」という、野心的なものだ。 


 こうなった背景には、1950年代後半から始まった大気中の二酸化炭素の観測がある。それには、氷床のボーリング試料に記録された、過去の温室効果ガス濃度の測定も含まれよう。観測によると、1850年頃の産業革命の前は、数百年にわたり280PPM(PPMは百万分の一)であったと推定されている。ところが、2015年には400PPMに達した、差し引き43%も増加したという(鬼頭昭雄「異常気象と地球温暖化の解明に挑む」:日本銀行「にちぎん」2018春、第53号)。


 ならば、産業革命よりもう少し時代を遡るとどうなるだろうか。例えば、中川毅(たけし)氏による説明には、こうある。


 「だが実際のデータを見ると、メタンは5000年前、二酸化炭素は8000年前頃から、ミランコビッチ理論で予測される傾向を大きく外れて増加していた(図6・3)。ラジマン教授はこの原因を、アジアにおける水田農耕の普及、およびヨーロッパ人による大規模な森林破壊にあると主張して学会に衝撃を与えた。」(中川毅「人類と気候の10万年史」講談社ブルーバックス、2017)


 そもそも、温度を引き上げているのはガス、その中でも二酸化炭素ばかりではあるまい。太陽活動が盛んか否かを始として、様々な要因があろう。


 とはいえ、人間活動が盛んになってからの気温上昇に、温室効果ガスが某か寄与しているであろうことは、それなりにわかる。例えば、1988年に設立されたIPCC(国連の「気候変動に関する政府間パネル」は、温暖化は人間活動が原因なのかと問い続けてきた。それぞれの時点での評価としては、1990年の「気温上昇を生じさせるだろう」から1995年の「影響が全地球の気候に表れている」へ、2001年には「可能性が高い」(66%以上)へ。それからも、2007年の「可能性が非常に高い」(90%以上)を経て、2013~2014年には「可能性が極めて高い」(95%以上)へと変わってきている。

 太陽が放射する可視光線を吸収しにくい反面、地表から放射される赤外線は吸収する性質をもつ。そうなると、差し引きの勘定がどうなっているかだが、地球が吸収している光のエネルギーの方が、宇宙への放出よりも僅かに小さいのだという。要するに、これが積もり積もって気温の上昇を招いているとの話が組み立てられている。


 ともあれ、このパリ会議での合意により、温室効果ガス削減の地球全体での目標にかなうように、各国はそれなりの努力をしなければならないことになった。各国の現状と力量がともに問われよう。すなわち、各国は、全体の目標を念頭におきながら、自分のところでの排出量を段階的に削減するプランを立てねばならない。その上での、今度はたゆまぬ努力が欠かせない。
 アメリカだが、トランプ政権になってからパリ協定から外れる姿勢を露わにしている。顧みると、1992年に「気候変動枠組条約」を採択、1997年には「京都議定書」が採択されたものの、2001年そのアメリカが「京都議定書」から離脱したことがある。

 2009年にデンマークのコペンハーゲンで開かれたCOP15においては、米国などの先進国と発展途上国の対立があり、妥結に至らなかった。一方、経済発展の著しい中国は、現時点でみるかぎりよくわからないところが見受けられるものの、パリ協定の遵守を表明するに至っている。かたや日本においては、「2030年までに、温室効果ガス排出量を2013年と比べ26%削減する」というものだ。

(続く)

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♦️2の2『世界と人間の歴史・世界篇』銀河系中心部・ブラックホール

2018-10-05 09:48:45 | Weblog

2の2『世界と人間の歴史・世界篇』銀河系中心部・ブラックホール

 

   私たちの銀河系に含まれる星の数は、およそ1000億個と見積もられる。それらの集合は、ディスク(円盤)に見立てることができるだろう。その直径は、約10万光年だと言われる。ここに1光年は1年の間に光が進む距離で、約10兆キロメートルを表す。およそ10京キロメートルある訳だ。ディスクの厚さは約1000光年ある。

   バルジとは、膨らみや樽の胴部分のことで、銀河系中心の盛り上がりをいう。このバルジを入れたディスクの厚さは1500光年位ある。いずれにしても、大変平べったい形をしている訳だ。その真ん中は実に沢山の星が密集していることから、まるで目玉焼きの黄身のように盛り上がっている。
 その銀河の渦巻きの外延部に近い部分、そこを川底に見立てて、我が身を置いたとしよう。そこから「天の川銀河」(銀河系の別名)を見上げてみる。すると、天の川は夜空をぐるりと一周するようにして繋がっている。が星が集結している部分と、星がまばらになって見える部分とが分かれている。渦巻き銀河の中で星が一番集結しているバルジには、恒星集団が密集していると考えられている。外側まで広がっている円盤構造の部分に対し、こちらは厚さ方向に丸いというよりは、楕円体のような広がりをしている。
 このバルジは、「巨大なブラックホール」で満たされていると考えられる。それは、例えば物理学者の高梨直紘(たかなしなおひろ)氏によって、比較的私のような者にもわかりやすく説明されている。少し長くなるが、引用させていただきたい。
  「赤色巨星になった後の星の運命は、星の重さによって2つに分かれます。太陽の重さの8倍よりも軽い星は、星をつくっていたガスが宇宙空間に放出されていき、惑星状星雲と呼ばれる段階を経て、最終的には星の芯の部分だけが残ります。これが白色矮星(はくしょくわいせい)と呼ばれるものです。白色矮星では新しく核融合反応は起こらないため、基本的にはそのまま少しずつ冷えていき、最終的にはまったく光らない星となると考えられています。
 太陽の8倍を超える重い星の中心部はさらに縮まっていき、星全体はさらに大きく膨らみます。そして、最終的には星の中心核が融けて圧力を失い、星全体が中心に向かって崩れ落ちる重力崩壊と呼ばれる現象を起こします。これが重力崩壊型の超新星爆発です。星をつくっていたガスの多くは宇宙空間に吹き飛ばされ、超新星残骸となります。
 一方、星の中心部には中性子星あるいはブラックホールが形成されます。中性子星も白色矮星と同じく、時間の経過とともにエネルギーを失っていき、最終的には光を放たない天体になると考えられています。ブラックホールも、特に外部からの刺激がない限りは、そのまま大きな変化は起きません。」(高梨直紘「これだけ!宇宙論」、秀和システム、2015)
 なぜそこにブラックホールがあるのかという問いかけに、クラウス教授は次のように言われる。
 「とても忍耐強い天文学者がこの星々のちょうど真ん中あたりをみつけ続け、星々の軌道を観測した。すると、星がある暗い物体のまわりを回っていることがわかったんだ。この物体の質量をきめるのには、きみたちもこれから直ぐ好きになるニュートンの万有引力の法則を用いた。

 こうしてその物体がまわりに星を引き寄せていて、太陽の百万倍の質量があることがわかったんだ。とても小さく、光を放つこともなく、太陽の百万倍の質量を持つという事実から、われわれはブラックホールだと考えている。・・・・・もちろん、それが見えないことは残念なことだ。もっとさまざまな観測を重ねて、それが本当にブラックホールかだといえるのかを見極めたいと思っている。

 ブラックホールは密度が高すぎて、光さえ逃れることができない。脱出するには光より早い速度が必要なんだ。」(クラウス教授のアリゾナ大学での、社会人らを相手にした講義・宇宙白熱教室第一回「現代宇宙論」二〇一四年六月二〇日NHK放送)
 そのブラックホールのあるところでは、「中心部を取り囲むように、「事象の地平線」と呼ばれる半径がある。事象の地平線の内側では、ブラックホールから脱出するために必要な速度が光の速度よりも大きくなるため、古典物理学によれば、なにものもそこから逃げ出すことはできない。したがって、事象の地平線よりも内側で放出されれば、光でさえも、ブラックホールの外に出てくることはない」(ローレンス・クラウス著・青木薫訳「宇宙が始まる前には何があったのか」文藝春秋刊)と考えられている。

(続く)

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