◻️192の11『岡山の今昔』岡山人(19~20世紀、大西祝)

2021-05-13 15:18:38 | Weblog
192の11『岡山の今昔』岡山人(19~20世紀、大西祝)

 大西祝(おおにしはじめ、1864~1900)は、日本の哲学者にして、教育家だ。  
 岡山城下の西田町の生まれ。親の関係であろうか、幼い頃からキリスト教に親しむ。15歳のとき母方の大西家を継ぐ。

 1881(明治14)年同志社普通科卒業後、同神学科に入学。同志社英学校在学中に新島襄から洗礼を受ける。


 1885(明治18)年東京大学の大学院生となり、倫理学を専攻し、「良心起原論」を研究テーマに励んでいた、という。


 1891年 (明治24年)には、早稲田大学の前身、東京専門学校の講師陣に就職する。まだ帝国大学の大学院生だったというのに、彼を早稲田に招いたのは、文学者の坪内逍遙(つぼうちしょうよう)だというから、驚きだ。 


 同学校では、前年に文学科を開設したばかりであったという。哲学・倫理学・心理学・美学などの講義を一手に引き受ける。

 そのうちには、人気が出たようで、岡山出身の綱島梁川(つなしまりょうせん)も聴講していたという。


 一方、言論活動にも精力的に取り組む。持ち前の真面目さ、正義感潔もあってのことだろうか、内村鑑三不敬事件を発端とする「教育と宗教の衝突」論争では、自由主義の立場から論戦を挑む。
 1898(明治31)年、ドイツへ留学するが体調を崩し、翌年研究を中断して帰国する。それからは、京都、岡山などで療養する。

 かくて、学問の道では、日本人の手になる初の本格的な西洋哲学史、倫理学を著わしたことがあろう。 それもさることながら、思想や宗教の自由を、国家という権威を笠に着たナショナリストたちと渡り合う。
 その前からの病と闘いつつも、自由と人権のための活動をためらわなかったのは、その先駆者であることを何かしら自覚していたのではないだろうか。

(続く)

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◻️192の6『岡山の今昔』岡山人(19~20世紀、戸塚文海) 

2021-05-13 15:17:21 | Weblog
192の6『岡山の今昔』岡山人(19~20世紀、戸塚文海) 


 戸塚文海(とつかぶんかい、1835~1901)は、日本海軍の医師だ。浅口郡玉島村(現在の倉敷市)の生まれ。


 やがて、請われてであろうか、医師の戸塚静海(17991876)の養子となる。静海は、伊東玄朴・坪井信道とともに、江戸の三大蘭方医と呼ばれる人物である。


 その後は、緒方洪庵の適塾に入る。また、シーボルトに学び、将軍の侍医となる。
 
 明治時代に入ってからは、医学静岡病院頭となる。1872年(明治5年)には、軍隊の医者を志し、海軍省5等出仕の待遇となる。

 それからは、出世コースをたどっていく。軍医寮学舎長、海軍省医務局長兼本病院長、本病院長などを務めていく。

 1876年(明治9年)には、海軍軍医総監になる。翌年には、初代医務局長となり、随分と出世したものだ。

 めでたく退官した後には、高木兼寛(たかぎかねひろ)らと共立東京病院(後の東京慈恵医院)を設立し、1882年(明治15年)からは、同共立東京病院長を務める。


 その後も海軍との関係が続いたようだが、1895年(明治28年)12月、後備役となり、1900年(明治33年)には、ようやく退役する。


 この間には、海軍軍医制度創設に貢献したことで、広く知られる。色々な場面に登場していたようなのが、例えば、こんな話が伝わる。

 「例えば、江戸時代の医学生がストライキを起こしたという話があります。学生のストライキは1960年代の大学紛争だけではありません。江戸時代や明治期に何度も起こっています。長崎の医学所(精得館)では、松本良順が江戸に帰った直後に、館長の戸塚文海が月謝、畳代、障子代を学生から徴収しようとしたところ、校長排斥運動が起こりました。松本良順が長崎へもどり説得し収拾しましたが、松本が江戸に戻ると、今度は江戸の医学所で騒動が勃発します。
 この騒動の原因は松本良順によるカリキュラム改革です。当時の学生たちは医学だけでなく、兵書も学んでいました。そこで医学の学習に専念させようとしたところ、30名の学生が一斉に退学届を出しました。その理由は、兵書を訳すと、御大名から声が掛かる。月に6回ぐらい講義に行けば、1~2ヶ月分の修学費用が出て、その上、着物の拝領があるという事情がありました。それを良順が禁止したため反発を招いたということです。学生には適塾出身者が多かったため、良順は適塾の先輩である福沢諭吉に学生の説得を依頼しましたが、それでも3分の1の学生は退学しました。」(文部科学省高等教育局医学教育課編集「2015年度医学・歯学教育指導者のためのワークショップ記録集」2015.7.29)


(続く)

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