363の2『自然と人間の歴史・世界篇』『E=mc2』(イー・イコール・エム・シー・ジジョウ)
さて、アインシュタインの特殊相対性理論から導かれる一つに「質量とエネルギーの等価性」があり、式でいうと、 エネルギー(E)=質量(m)×光の速度(c)の2乗 、E=mc2(イコールm×c×c)というものだ。その発見以来、人類史上最も有名な法則名となる、
参考までに、彼の論文(1905)中では、光速度をV、エネルギーをLとすると、当該部分「エネルギーLを放出すると、物体の質量はL/V2だけ減少する」との表現でこの式が表現されている。
しかして、このアインシュタインの説は、1932(昭和7年)にイギリスの二人により確認された。ジョン・コッククロフトとアーネスト・ウォルトンは、実験物理学者だ。共同して、100kV(つまり、100万ボルト)の電圧まで作れる高電圧発生装置を電源として組み込み、加速器を製作したという。この装置は、彼らの名前をとって「コッククロフト・ウォルトン回路」と呼ばれる。
なお、かかる功績により二人は、1951年(昭和26年)に、「人工的に加速した原子核粒子による原子核変換についての先駆的研究 」の名目にて、ノーベル物理学賞を受賞した。
とはいえ、当時の技術では、粒子の加速は3Mev(=3×10^9ev(「ハット」記号を含む後半部分は10の9乗電子ボルトと読む))が限界だったらしい。
とはいえ、当時の技術では、粒子の加速は3Mev(=3×10^9ev(「ハット」記号を含む後半部分は10の9乗電子ボルトと読む))が限界だったらしい。
そして彼らは、この加速器を使って、陽子の加速実験を行う。すなわち、リチウムの原子核に加速した陽子を衝突させたところ、2個のヘリウム原子核が生じたのだが、その合計質量は、元の陽子とリチウム原子核の質量の和に比べて、僅かに減少していて、その質量欠損分については、アインシュタインの式にいうところのエネルギーとして放出されていることが観測されたのだという。
ところで、この関係式の意味するところをやや広くみるには、まずは、古典物理学の世界で、それぞれ互いに独立して論じられてきた「質量保存の法則」と「エネルギー保存の法則」とのつながりから、紐解いてみるべきだろう。
最初の質量保存の法則は、1774年にラボアジエが発見した。ここでは、温暖化との関係で注目される反応からひろうと、炭素と酸素から二酸化炭素が生成する場合を化学式でいうと、C + O2 → CO2であって、それぞれ12g、32g、44g。この反応において、炭素12gと酸素32gを反応させると、二酸化炭素が44g生成する。これにおいては、反応前は炭全体の質量は44g、反応後は二酸化炭素が44gあるので全体の質量は44gであり、反応の前後で全体の質量は変わっていない。
二つ目の反応として、エタンと酸素から二酸化炭素と水が生成する場合をとりあげよう。こちらの化学式は2C2H6 + 7O2 → 4CO2 + 6H2Oというもので、それぞれ60g、224g、176g、108gとなろう。反応の前後で284gとなっており、これまた全体の質量は同じだ。
二つ目の反応として、エタンと酸素から二酸化炭素と水が生成する場合をとりあげよう。こちらの化学式は2C2H6 + 7O2 → 4CO2 + 6H2Oというもので、それぞれ60g、224g、176g、108gとなろう。反応の前後で284gとなっており、これまた全体の質量は同じだ。
二つ目には、エネルギー保存の法則だが、こちらには、様々な局面があるだろう。そんな中から一つを例えるに、地表から20メートルの高さ(h)に身をおき、ある質量(m)のボールを静かに離す、簡単化のため、そのとき空気抵抗が無視できるとしよう。すると、そのボールが地表に到達する際の様子の目安としての速度(v)は、高さ20メートルの所と地表との間でエネルギー保存の法則が働く。式でいうと、1/2m02(m0はエムゼロ、2は二乗)+mgh=1/2mv2(2は二乗)+mg0(0はゼロ)となり、これを整理するとmgh=1/2mv2となることから、v=72km/毎時となろう。
三つ目には、仕事量との関連で、この法則を当てはめてみよう。ここにジュール(英: joule、記号:J)というのは、仕事、熱量、電力量といったエネルギーの単位であって、発見者のジェームズ・プレスコット・ジュールに因む。
具体的にいうと、「1 ジュールは標準重力加速度(9.80665 m/s²の重力)の中で約102 グラムの物を 1メートル持ち上げる仕事」と定義される。
したがって、1メートル持ち上げるとは重力に対して「力の向きに動いた距離」、力の大きさとは上に持ち上げるので「重力(9.80665 m/s²)と物体の重さの積」となるだろう。
しかして、1 ジュールは標準重力加速度の下でおよそ 102.0 グラムの物体を 1 メートル持ち上げる時の仕事に相当する。
そういうことだから、今質量を1グラムに見立てて、先のアインシュタインの式に当てはめると、 光速c = 30万km/s = 3億m/s (メートル毎秒)、質量m = 1g = 0.001kg なので、
mc^2(c^(ハット)2というのは、c×cをいう) = 0.001 × 3億 × 3億 = 90兆ジュール が導かれる訳だ。
しかして、これら三つの事柄でいうのは、質量とエネルギーとは別次元のものと考えられているのであり、あくまでも「物質からエネルギーが生まれる」類いの話であったのたが、冒頭で紹介したような関係式が成立する世界では、この式を変形してm=E/c2ということなのだから、「質量とエネルギーとは等価」にして、この拡張した範囲での関係をありていにういうならば、まさに「エネルギーから物質が生まれる」という表現こそがふさわしい。
しかして、かかる相対性理論から導かれる式により、両者が一つの法則「エネルギー・質量保存の法則」に統合されたことになるという。
(続く)
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