〈本日8/6は、65回目の広島「原爆の日」。仕事が入っていたり、また東京という地に住んでいるとつい疎遠になりがちですが、今朝は8時15分、広島市のある南西方向に1分間の黙祷…ホッとしました〉
8/3(火)~5(木)の3日間、お客様お二人を長野県にある北アルプス/大天井岳(おてんしょうだけ・2921・9m)-常念岳(じょうねんだけ・2857m)へご案内しました。連日の猛暑で心配していた午後の雷雨に見舞われることもなく、雲上のパノラマとお花畑の縦走を満喫して頂くことができました。
近年、ツアー・ガイド登山による遭難騒ぎが続いており、万全を期してもなお緊張の入山でした。山行中、ヘリによる救助現場にも遭遇。私の場合はつくづくお客様に恵まれ、助けて頂いた今回の山行だったと実感しています。
そして、お客様の満足そうな笑顔を見るのが、ガイドする側としては何よりも嬉しく、最高のご褒美ですね。
初日の3日は、同県安曇野(あずみの)市 穂高有明(ほたかありあけ)の中房温泉(なかぶさおんせん)を7時前に出発。標高差約1250mの合戦尾根(かっせんおね)を高度順化も兼ねてゆっくり登り、13時半ころ、標高2704mの稜線上に建つ燕山荘(えんざんそう=写真左上)に入りました。
その頃には雨とガスに…予定していた燕岳(つばくろだけ/2762・9m)登頂は、お客様のご希望により見送りました。
それにしても、小屋の周りにこんなお花畑があるのは、さすが北アルプスですね。ヤマハハコ、テガタチドリ、ハクサンチドリ、ミヤマアキノキリンソウ、ウサギギク、エゾシオガマ…幸せです。
燕山荘は収容人数600人を誇る、北アルプス屈指の山小屋。オーナー赤沼健至さんの燕岳の自然に関わる夜のトークとアルプホルンのコンサートが、とても素敵です。宿泊されたら、ぜひご傾聴を!燕岳と燕山荘が好きになることうけあいです(笑)
翌4日朝は、美しいご来光と爽快な青空で明けました。
南西方向には…
北アルプスの盟主・槍ヶ岳(やりがたけ/3180m)。手前の稜線通しには、これから目指す大天井岳がどっしりと控えています。
お客様お二人の顔も晴れやか。5時半、縦走開始です。
自分たちの影に向かって朝のごあいさつ。森林限界を超えた山岳の、これも楽しみの一つです(笑)
歩道脇には「アルプスの女王」コマクサ(駒草/ケシ科)の花が満開でした。ここでは、槍ヶ岳をバックに。
他の植物が根を張れないような強風砂礫地に群落を作るコマクサは、こんなに可憐でも意外に強者!?
日本のスミレの仲間で最も標高の高い場所に生育するタカネスミレ(高嶺菫)。こちらもコマクサと同じ環境の中、気品のある黄色で、大地にへばりつくように咲いていました。
岩の割れ目には、イワギキョウ(岩桔梗/キキョウ科)。濃いブルーが眩しいほどです。こちらも逞しいですね。
大天井岳へのきつい登りにかかると…
チングルマ(稚児車/バラ科)の群落が疲れを癒してくれました。
白い清楚な花はもちろん、風車のような涼しげな果実も魅力的で、私の好きな高山植物の一つです。でもチングルマって、草本ではなく実は“木”であること 、ご存知でした?
10時半、大天井岳に到着。2921・9mは、今回の山行での最高峰です。気温22℃。好天の頂上は、多くの登山者で賑わっていました。
南西方向、眼前には…
槍ヶ岳です。稜線へ突き上げる雪渓の長さ、大きさからも、今年は残雪が多いようです。
写真右側、北東方向へ派生している尾根が「北鎌」。7月下旬から、一人が行方不明になっています。警察による捜索は打ち切られたようですが、山仲間や東京都山岳連盟救助隊などによる捜索が、現在も続けられています。
振り返ると、いま歩いてきた燕岳方面からの尾根道は、早くも西(安曇野)側からの上昇気流による積雲に覆われ始めていました。雷雨を警戒して、早々と出発です。
風景としては「夏真っ盛り!」で、なかなか良いんですけど…ね。
常念岳方面へ向かう途中…
キンポウゲ科のハクサンイチゲ(白山一華)とミヤマキンポウゲ(深山金鳳花)による、白と黄の競演が見事です。斜面を埋め尽くすようなお花畑と、多種多様な植物のお出迎えに、お客様とともに歓喜とため息の連続です。
一方で、こうした光景が徐々に見られなくなりつつある太平洋側の山々‐奥多摩はもちろん、奥秩父、大菩薩嶺、八ヶ岳、南アルプス…の現実が、脳裏をかすめます。
本日午後も、ガスに覆われたものの雷雨になることはなく、ほぼ予定通りの14時過ぎ、常念小屋へ到着しました。身体が慣れたこともありお客様も快調で、ひと安心です。
東に槍・穂高連峰を望む常念小屋の夜は、晴天の下、静かに更けていきました。
最終日5日は、朝食前の5時前から常念岳往復へ出発。
見事なモルゲンロート(朝焼け)と…
大雲海で1日が明けました。
「(多島美の)瀬戸内海のよう…」とお客様の一人が表現されたこの光景に、少しばかり郷愁の感…?
標高差約400m、岩場と岩屑の急登を順調にこなし、約1時間半で頂上へ。
標高2857m、360度の視界が広がる常念岳山頂で山座同定(さんざどうてい=見える山の名前を地図やコンパスを使って特定すること)です。西側眼の前は、3000m峰8座が連なる槍・穂高連峰。
北側には、今回辿って来た燕岳・大天井岳から続く稜線と、その奥に遠く剱・立山連峰も。東は八ヶ岳、南アルプス、富士山まで、まさに遮るものがないパノラマです。
常念小屋への下山途中、長野県警のヘリコプターが小屋へ飛来しました。高年の男性が気分が悪くなったとのことで、ヘリで搬送されていきました。多くの登山者が訪れる夏山ですが、ここは3000m級の高山なんですよね…身が引き締まるとともに、山岳救助におけるヘリコプターの重要性を再認識しました。
常念小屋で美味しい朝食を食べたあと、9時前ころ下山開始。気温がグングン上がる中、涼味溢れる一ノ沢沿いを下りました。
途中、写真のクルマユリ(車百合/ユリ科)をはじめ、ニッコウキスゲ、シモツケソウ、クガイソウ、センジュガンピ、クロクモソウ、キソチドリ…多種多様な植物たちが見送ってくれました。 名残り惜しい気分です。
実は私が一番心配していたのが、最終日のこの下り。疲れが出るころだけに、常念岳頂上から標高差約1500mを一気に下るのが「核心」かな…と考えていました。が、お二人のお客様は、私のアドバイスや指示を素直に聞いて的確に行動して下さり、(少し滑ったりすることはありましたが)特に危なげもなく、13時ころ無事に下山することができました。
Tさん、Iさん、本当にありがとうございました。
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