13日、仕事の下見を兼ねて北アルプス/徳本峠(とくごうとうげ・2135m)を訪れました。
徳本峠は、北アルプス南部、霞沢岳(かすみさわだけ・2646m)と大滝山(おおたきやま・2615m)をつなぐ尾根上の鞍部(コル)に位置する。「とくごう」の読みが面白い。「新日本山岳誌」(日本山岳会編著)などによると、一説には、幕末の弘化のころ(1840年代)、梓川周辺にあった十二の杣小屋の一つ「徳吾」へ向かう峠-を意味していた。明治の陸地測量部による大規模な測量の際、藩政当時の検地帳に名前のないこの地に、土地の古老から得た漢字を当てはめた結果、「徳本」を「とくごう」と読ませる間違い?が生じた、という。
1933(昭和8)年に釜トンネルが開通し、自動車が上高地へ入るようになるまでは、木材の切り出しや牛の放牧などのため、松本平から上高地に入るほとんどの人々が越えた歴史のある道。一方で、信仰ではなく「楽しむために登る」近代登山の歴史も支えてきた。その草分けが、「日本アルプスの父」と呼ばれるイギリス人宣教師ウオルター・ウエストン。ウエストンは、1892(明治26)年の夏に槍ヶ岳に登頂して以降、徳本峠に11回立っているという。黎明期の槍・穂高連峰に足跡を残すとともに、著書「日本アルプスの登山と探検」でその魅力を広く世に紹介し、日本の近代登山の発展に寄与した業績は大きい。
5:30 島々バス停(標高724m)発。晴れ、気温15℃。
島々谷(しましまだに)川沿いの林道を行く。北前方(奥)に見えるのは、大滝山から延びる2073.4m三角点ピーク。
7:25 二股(930m)。この先から…
待ちに待った登山道に。
清冽な島々谷南沢沿いに、天然の涼とトチノキやカツラ、ミネカエデなど広葉樹林に包まれた道を遡る。
ところどころ足場が悪い箇所はあるものの、木橋や桟橋が整備され、予想以上に歩きやすい。
ソバナ(岨菜/キキョウ科)
アキアカネ(秋茜/トンボ科)も涼求め…。
9:35 岩魚留小屋(1260m)。現在は休業中。
すぐ上にある岩魚留ノ滝(左)。18℃。
「このあたりから急流に変わり、滝も多くなりイワナ(岩魚)も足止めされることから、こんな地名がうまれました」(現地解説板より)。確かに、小屋を境に道の傾斜も増す。
「ちから水」(1820m)で、冷気と元気をもらい…
一気に…
12:10 徳本峠へ。20℃。
徳本峠小屋。そして…
「峠に立った時、不意にまなかいに現れる穂高の気高い岩峰群は、日本の山岳景観の最高のものとされていた。その不意打ちにおどろかない人はいなかった」(「日本百名山」/深田久弥著)
午後の積雲に阻まれて全景こそ拝めませんでしたが、前穂高岳(まえほたかだけ・3190m=右上)~明神岳(みょうじんだけ・2931m=真ん中上)へと続く鋭い稜線に、古より多くの人々を魅了してやまない穂高の姿を垣間見ることができました。
峠への道で出会った人は、釣り人を含めて5名のみ。最近の登山ブームと盛夏の北アルプスにあっては、やはり静寂のひと時。
14:15 一転、賑やかな上高地・明神(みょうじん・1520m)へ。
明神池畔に佇む日本アルプスの総鎮守・穂高神社奥宮に参拝。
神秘的な明神池から明神岳を仰ぐ。右上はⅤ峰(2726m)。
梓川右岸にあるウエストン碑。今回初めて、訪れることができました。
翌朝、田代橋より望む梓川と穂高連峰。
島々宿から上高地まで約25㎞。先人たちの思いや歴史がつまり、深山の静けさを保つ道。そして、その先に展開する圧倒的な山岳景観…一度は歩きたかった徳本峠越えは、期待通りの名ルートでした。
コースタイム(又はハイペース?)だったらってことですね?たぶん…。
滝があって楽しみです。
滝・池・沢・湖・沼大好きなんでf(^_^)
新島々から徳本峠まで、コースタイムで約7時間半(休憩含まず)。私たちも特に飛ばしたわけではないのですが…ぜひご自分の足で確かめてくださいね。徳本峠道、味わいのある魅力的なコースですよ~。