2/15(火)~17(木)の3日間、八ヶ岳(やつがたけ、長野県茅野(ちの)市・南佐久郡 南牧村(みなみさくぐん みなみまきむら)ほか)へ行きました。
今回の目的は、南八ヶ岳の赤岳(あかだけ・2899.2m)-硫黄岳(いおうだけ・2760m)縦走。パートナーは、仕事仲間のM氏。積雪期の八ヶ岳に一緒に足を運ぶのは、3年連続になります。
出発前夜~当日未明に発達した南岸低気圧が通過、多摩を含む東京地方も一面の銀世界に。八ヶ岳では、場所によって「胸まで埋まる」まとまった積雪になり、ラッセル(新雪を踏み固めて、道を拓きながら進むこと)や雪崩を気にかけながらの入山となりました。
しかし、アタック日の16日は「厳冬期とは思えない」好天に恵まれ、久々に楽しい、雪三昧の山行を満喫することができました。いささか疲れはしましたが…(苦笑)
<15日/曇り時々雪>
JR中央本線・日野春駅(ひのはるえき、山梨県北杜(ほくと)市)から望む甲斐駒ケ岳(かいこまがたけ・2967m=写真右奥)。 標高615mのこの場所で、新雪は15~20cmほどでしょうか。
八ヶ岳への西の玄関口・茅野駅前の様子。何度も訪れていますが、こんなに雪が多いのは初めてです。
11:30 バスで登山口の美濃戸口(みのとぐち・1502m)着。うーん、新雪は30cm近くありそうです。
しかしさすが、冬季営業小屋が多く、雪山初心者も比較的入りやすい八ヶ岳。平日にも関わらず、多くの登山者が訪れていました。
11:40 本日の幕営地・赤岳鉱泉(あかだけこうせん)へ向け、出発。気温-2℃。この時期の八ヶ岳としては、気持ち悪いほど暖かい?
林道の途中で乗用車が2台、深雪にはまって動けなくなっていました。
雪が突然降り始めたり、晴れ間が覗いたり、天候がまだ安定しません。
北沢沿いから、東前方に横岳(よこだけ)の岩峰群が姿を現しました。周辺の積雪は1.5mほど。
15:45 赤岳鉱泉(2220m)着。いつものことながら背中の重荷が応えましたが、ラッセルをすることもなくバンザイ!
17:00過ぎ、整地してテントを張って、落ち着きました。
気温-8℃。
赤岳鉱泉の小屋は通年営業。幕営料(1日1000円/人)を支払えば、水を分けてもらえ、トイレ(便座が温かいウオームレット付き!)も自由に使えます。冬の風と冷え込みは第一級といわれる八ヶ岳にあって、この小屋は、幕営者の心のよりどころです。
本日のメーンディッシュは…
国産牛肉と新鮮野菜、キノコたっぷりのすき焼き。M氏がふんだんに用意してくれた具材で4回戦?までなだれ込みました。(笑)
20:00過ぎ就寝。
<16日/晴れ>
4:30起床。朝食に、すき焼き風うどんを流し込んで…
7:00前出発。まずは、文三郎尾根(ぶんざぶろうおね)から最高峰の赤岳を目指します。気温-8℃。-20℃も珍しくない厳冬期のこの山としては、やはり暖かく感じました。
冬季閉鎖中の行者小屋(ぎょうじゃごや・2340m)は、どっぷり雪の中。朝陽に白く輝くのは阿弥陀岳(あみだだけ・2805m)。今回は登りません。
南東前方には…
目指す赤岳が、いまだ眠りから醒めきらぬ感…静かに、堂々と聳えています。気持ちが高ぶります。
文三郎尾根の急な登りから北を振り返ると…
純白の北アルプスが近い!写真左から、槍・穂高~後立山連峰が見えています。
そして南には…
権現岳(ごんげんだけ・2715m)の奥に、左から北岳(きただけ)、甲斐駒ケ岳、そして仙丈ヶ岳(せんじょうがたけ)-南アルプス3000m級の銀嶺が連なります。
赤岳頂上直下の鎖場に差し掛かったころ、朝陽に迎えられました。
同じ場所を昨年4月に下山した時は、雪が多く鎖が埋まっていたためロープを出しました。今回は意外にも、(この場所に限っては)雪の付き方が少ないようです。
9:10 赤岳頂上着。南東方向、眼下の雪化粧した北杜市街と、その奥に浮かぶ富士山が、絵画のように美しい。
ここまではばっちりのトレースにも助けられ、快適そのもの。無風、気温0℃も、厳冬とは思えない気もちよさです。
しかし…
本日の核心、横岳(写真右奥)方面はトレースがありません。というか、頂上で3人の登山者に出会いましたが、いずれも文三郎尾根からの往復とのことでした。
時に腿まで埋まりながら、頂上北側直下にある赤岳展望荘(あかだけてんぼうそう)まで一旦下降。ロープなどの登攀具を確認して10:30、縦走を開始しました。
横岳が威圧的に迫って来ます。(地蔵の頭付近より)
点々と先行するのは…
ノウサギ(野兎/兎目ウサギ科)の足跡。
私たちが躊躇するような急斜面を縦横無尽に走り回っており、「怖くないのかなぁ」と、動物の専門家でもあるM氏と話しをしました。それを追っているかのようなテン(貂/食肉目イタチ科)の痕跡も確認。いつものことながら、厳冬の高山で逞しく生きる野生動物の営みには、感動させられます。
日ノ岳(ひのだけ)東側を巻く急峻な斜面。横岳岩峰群の始まり、ミスは許されません。この場所を通過後、M氏とロープをつなぎました。
鉾岳(ほこだけ)。
ここは、凍った西面をトラバース。
横岳縦走時は終始、タイトロープ(岩場や雪面でロープをつなぎ同時に行動すること)とスタカット(より危険な個所で、お互いに確保しながら交互に行動すること)を使い分けながら、慎重に通過しました。
12:00 鉾岳通過後、しばしの休息。左奥に見えるのは赤岳。時折冷たい西風が吹き抜けるものの天気は最高。こんなに条件の良い冬の八ヶ岳は初めてです。
ただ、膝~腿までのラッセルがひたすら続きスピードが上がらない。行動中は日差しが暑く、特に日当たりのよい東面は雪が緩んで気持ち悪い。雪崩の影も、頭をよぎります。
目指す硫黄岳(写真左)手前に、横岳の主峰・奥ノ院(2829m)が立ちはだります。(三叉峰(さんじゃほう)より)
13:00 奥の院。某大学山岳部パーティ二人組が追い付いて来ました。ここから先は、若い力に先行してもらうことに。(笑)
奥の院の下降も急峻。スリップしたらアウトのため、私たちはもちろんロープで確保しました。
しかし彼らは、ハーネス・ヘルメットを装着していたにも関わらず、ロープを使わずじまい。部員二人(こちらも寂しい…)の新人訓練とのことでしたが、下級生のピッケル・アイゼンワークがおぼつかなく苦労していたため、「大丈夫かな…」とハラハラしました。
13:30 横岳岩峰群をクリアして台座ノ頭(だいざのあたま・2795m)着。ここで、(個人的に)ショッキングな光景が…。
ニホンジカ防護柵がこんなところに…2年前の冬にはありませんでした。
標識には「貴重な高山植物をニホンジカの食圧から守るため…平成22年8月…林野庁・南八ヶ岳保護管理運営協議会」とあります。確かに八ヶ岳周辺も、ウラジロモミなどの樹皮がシカに食べられ、立ち枯れている光景によく出遭います。
台座ノ頭周辺は、ウルップソウやコマクサの群落が広がることで有名です。特にウルップソウは、日本では北海道礼文島、本州の白馬岳周辺とここ八ヶ岳にしか分布しない特産種とのこと。こんな高所にまで、ニホンジカは確実に上がり始めているようです。
14:30 硫黄岳に(やっと)到着。
この最終ピークへの登りがキツかった…気温が高い中でのラッセルが応えたのでしょうか…恥ずかしながらバテ気味の私に、M氏がスポーツドリンクのお湯割りを作ってくれました。その美味しかったこと!復活することができました。
ナトリウム不足が原因?汗をあまりかかず、喉が渇いていないようでも、低温低湿度の環境で予想以上に身体の水分と塩分が奪われる冬山。皆さんも、十分お気をつけくださいね。
振り返ると、辿って来た主峰・赤岳(写真真ん中)~横岳(同左)の稜線と、右に端正な阿弥陀岳。その奥には権現岳もわずかに顔を覗かせ、南八ヶ岳の役者が勢ぞろいです。
2年前には風雪で拝めなかった絶景。M氏と二人、しばし感無量です。
赤岳鉱泉への下山中、またもやハプニング!?トレースをわずかばかり外れて、斜面でシリセード(尻制動=雪面に尻をついて滑り降りること)を楽しんでいたところ、正規のルートを外れてしまい…
再び登り返すハメに。先の大学二人パーティのトレースに引き込まれた形。彼らが「この先は胸ラッセルでもう下りられない」と引き返してきたため、標高差にすると50mほどでしょうか…若者三人?に頑張ってもらって登り返し、正規ルートに戻りました。
雪まみれの1日、最後におまけがつきました。(苦笑)
16:00テント場帰着。行動は9時間。
充実感満点の一日に、まずはビールで乾杯!
つまみは、目刺しやエリンギほかの焼き物、スモークチーズ…
そして本日のメーンは、これまた肉と野菜たっぷりのキムチ風?鍋…3回戦。空腹と疲労に沁みわたる夜の晩餐でした。(笑)
20:00過ぎ 幸福感に浸りつつ就寝。
<17日/曇り時々晴れ>
5:30起床。気温-2℃。
冬の八ヶ岳とは思えない暖かい朝は、「下降気味」との天気予報を裏付けるかのよう。
「雨が降らないうちに」と8:00過ぎ、テントを撤収して下山を始めました。快調に飛ばし…
10:20 美濃戸口へ帰着。気温3℃。
冬山の成否は、天候条件が大半を占めます。入山前は色々不安がありましたが、終わってみると、“三昧”の雪山を、心ゆくまで楽しめた山行でした。
特にM氏と訪れた八ヶ岳は、過去3度とも、風すらほとんどない好天に恵まれています。「晴れ男」って本当にあるのでしょうか?(笑)
Mさん、ありがとうございました。
※長い報告を読んでくださった皆さまも、ありがとうございました。
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