コロナで逼塞状態にあり、心は無性に漂泊の旅に出たがっている。一枚の写真で追憶し、逼塞状態を癒してみました。
この写真はサヌールの海岸で撮った流木の写真で、どこから流れ着いたのかヤシの木のようです。
この流木はほどよい大きさで、長い漂流によって肌触りもなめらかです。この流木に腰かけてぼんやりと海を眺める。時おり人が通りかかるが気になるほどではありません。波の音とたまさかの話声のみで静寂を楽しみます。
砂地にはわたしの足跡が残っています。この砂地にサロンの布を敷き寝転ぶと浜風が体を通り過ぎて至福の時が訪れます。ビンタンビールとサテなどがあるともうこれ以上望むことはありません。
あ、いやもう一つありました。砂地に寝転んでのバリのマッサージです。
ああ、早く戻りたい、いや訪れたい。
「海から打ちあげられたものはどんなものでも不思議に浄化されているんだ。使いようのないがらくたばかりだけれど、みんな清潔なんだ。汚なくて触ることのできないようなものは何ひとつとしてない。
海というのは特殊なものなんだ。僕は自分のこれまでの生活を振りかえるとき、いつもそんな浜辺のがらくたのことを思いだす。僕の生活というのはいつもそんな具合だった。がらくたを集めて自分なりに清潔にして別の場所に放りだす——しかし使いみちはない。そこで朽ちはてるだけだ」
村上春樹 世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド