まさおレポート

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ジャック・アタリ「国境はいずれなくなる」

2023-11-23 | AIの先にあるもの

2017年から2030年までの間に、人類史上まれにみる大型のテクノロジーイノベーションが続出し、われわれの暮らし、労働環境、学習方法、介護、思考、信条は激変する。それらのイノベーションにより、希少性という問題は大幅に改善されるだろう。

まず、すでに実現化しているイノベーションの一部が、企業、労働者、消費者、一般市民の日常生活にとって極めて重要になる。それらは、文化、生活慣習、イデオロギー、政治に影響を及ぼす。

コンピュータの性能向上によって、ビッグデータの威力が増す。2016年以降、ムーアの法則が働かなくなったとしても、である。たとえば、インテル社の創業者ゴードン・ムーアは、半導体の性能は18カ月ごとに倍になると唱えたが、インテル社によると、今後、それは30カ月になるという。

2025年以降、コンピュータは1秒間に2.88×1017回の計算を実行する。ちなみに、人間の脳は同じ時間内に10×1017回の計算を行えるので、その差はわずか3.5倍でしかない。新たな道具(機械学習、深層学習)により、予測モデルはより効率的かつ詳細になり、知識および医療分野はしだいに自動化される。人間は機械と会話するようになる。

2030年には、1500億個のモノが互いに、そして数十億人の人々とインターネットに接続されるという予測がある。モノのインターネット(IoT)も、ビッグデータの進化、識別システム(RFID、表面弾性波、光チップ)、センサー(ナノテクノロジー)の恩恵を被る。2025年、これらは4兆ドル(約440兆円)から11兆ドル(約1200兆円)の市場規模になると見込まれる。これは世界のGDPの7.5~21%に相当する。

建設現場や戦場をバーチャルに動き回れるようになる

3Dプリンタが産業界ならびに一般家庭に浸透するだろう。3Dプリンタの世界市場は、2013年の30億ドルから2025年には152億ドルの規模にまで達する見込みだ。産業界では、3Dプリンタの導入により、一部の製造現場は先進国に回帰し、一般家庭ではカスタマイズしたモノがつくられるようになる。

たとえば、日曜大工に必要な部品や道具、衣服、食器、家具、楽器、工芸品、さまざまな人工臓器などだ。ヨーロッパの宇宙旅行社は、2030年に月面で3Dプリンタを使って月の表土から宇宙基地をつくろうとさえ計画している(月面には隕石のチリが大量にある)。

拡張現実や仮想現実の道具を利用すれば、ホログラフィー対応のスマートフォンで通話中の相手を3Dで眺めることができるようになる。

今後、15年間に進化する視線追跡(アイフルエンス社)と顔追跡のテクノロジーにより、現実と仮想の相互作用が促される。スクリーンを利用せずに拡大した現実に、われわれのデジタルデータを投影することが可能になるのだ。建設現場や戦場をバーチャルに歩き回ることができるようになる。現実と仮想が行動および思考において混ざり合う。

ブロックチェーンは、誰もがプラットフォームなしで安全に情報交換できる画期的な技術である。この技術により、たとえばウーバーやエアビーアンドビーなどの仲介業者は不要になるかもしれない。いくつか例を紹介すると、イーサリアム(ビットコインの次に時価総額が大きい仮想通貨)により、仲介役なしで安全に契約を締結できるようになる。

コロニーは、個人の貢献の度合いに応じて自動的に報酬額が決まるシステムをつくって世界中の才能をつなぎ合わせようとしている。

オーガは、市況を占うために「みんなの意見」を利用してはどうかと提案する。電子マネーのビットコインはブロックチェーンの技術を利用してできた最初の例だ。ビットコインがもたらす影響は極めて大きいと思われる。

企業は、人工知能(AI:人間と同様の知能を再現することを狙う先端技術の総称)を使って自律的な情報システムを構築し、個人は、学習、会話、知覚、作曲、感情の刺激のために人工知能ロボットを利用するようになる。

このロボットの登場により、ヒトと人工物との違い、すなわち、「死すべき存在」と「不死の存在」との差は縮まる。

セマンティックウェブにより、検索エンジンと自然言語で会話できるようになる。したがって、助言を与える必要のある職業(医師、教師、弁護士など)に就く者にとって、セマンティックウェブは極めて便利だ。

人工知能とセマンティックウェブを組み合わせると、自動翻訳機になる。自動翻訳機があれば、世界中の専門家の見解を知ることができるようになる。そうなれば国境はいずれ廃止されるだろう。

3Dバイオプリンタを使って人体パーツを製造

ロボット工学は、さまざまなテクノロジー(ナノテクノロジー、人工知能、エネルギー貯蔵)の進歩の恩恵を受ける。ロボット工学の認知、音声合成、直立歩行、手先の器用さ(モノを把握する能力)は、大幅に改良される。ロボット工学も生命を不死へと導く人間の人工物化を加速させる。

ナノテクノロジーはナノメートル単位の新たな素材を生み出す。軽量化および耐久性を高めるためにカーボンナノチューブを既存の素材に加えると、その特性は一変する(外装材、抗菌剤、自己修復機能をもつ繊維、汚染浄化システム)。ナノテクノロジーの炭素繊維を用いれば、粉塵の侵入をほぼ防げる作業服が誕生する。

ゲノミクス、遺伝子治療技術、バイオテクノロジーは、世界のGDPの2.7%を占める。細胞治療により、幹細胞を用いて生体組織や臓器を再生できるようになる。大量のクローン動物がつくられる。マンモスなどの絶滅動物やタスマニアタイガーなどの絶滅危惧動物がクローン技術によってよみがえるといったことが当たり前になる。クローン人間に関する研究が急速に進み、これも不死の追求につながる。

バイオテクノロジーによっても、エネルギー、素材、ゴミ処理などの新たな形態が誕生し、3Dバイオプリンタを使って人体パーツが製造されるようになる。

神経科学は飛躍的な発展を遂げる。特に、身体の肉体的作用からも影響を受ける学習メカニズム、記憶、集中力、瞑想などに関する理解が深まる。認知、意識、感情に関する神経メカニズムの解明が進む。

脳細胞のさまざまな種類が明らかになり、脳の病気(アルツハイマー型認知症や統合失調症など)の発症において、それらの細胞が担う役割が明らかになる。さまざまなスケールで脳神経回路の詳細図が出来上がる。

神経細胞の活動をモニタリングする技術が開発される。脳の動きと、振る舞い、感情、思考、自意識との関係が確立される。神経科学においても、自意識およびそれをクローンに移す可能性に関する詳細な知識が得られるため、不死への期待が高まるだろう。https://toyokeizai.net/articles/-/184957?page=3

ジャック・アタリ氏「国境はいずれなくなる」




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