8月の江田島と道後温泉旅行のあと、司馬遼太郎の「坂の上の雲」を再読し始めた。就寝前のひと時に読むだけだからそんなには進まない。やっと2巻目の中頃というところ。日清戦争が終わって秋山真之と広瀬武夫がそろって海外に駐在武官として赴くあたりに差し掛かっている。この二人は仲が大変良かったらしい。秋山は米国へ広瀬はロシアに赴くことになる。
この赴任の少し前に広瀬が大好きな祖母の為に写真を撮ることになった下りが出てくる。引用すると、
「一枚は海軍大尉の正装でとった。その撮影がおわると、かれは上衣をぬぎ、ズボンをぬぎ、やがて下帯だけのすっぱだかになり、 ―これで一枚たのむ。と、写真館主にせまった。館主はしかたなくその裸体をとった。」
江田島の海上自衛隊の記念館で、ある部屋に入るといきなり、かなり大きく引き伸ばした広瀬武夫の褌姿の写真が目に入る。これがその時の写真だったのかと小さな発見をした。たんなる茶目っけ、やんちゃでとったのかとぼんやり考えていたが実は祖母思いの彼を物語る写真だったのだ。
ちなみにこの「坂の上の雲」の主人公は正岡子規と秋山兄弟だが、司馬遼太郎は広瀬武夫を好んだようだ。彼を描く筆致が常に愛情に満ちているように思える。
広瀬は裸の写真の裏に次のように書いたというが残念ながら記念館で見たかどうかは記憶にない。以下のように記されているという。
「吾を生むは父母、吾を育むは祖母。祖母八十の賀、特に赤条々、五尺六寸の一男児を写出して膝下の一笑に供す」
江田島 教育参考館の一枚の古写真 - 団塊亭日常 - Gooブログ