まさおレポート

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下ネタとお国柄

2018-09-21 | 紀行 モロッコ・チュニジア

我ら日本人は下ネタに対する寛容度の高いお国柄だと思う。飲み屋でのバカ話でも下ネタはふんだんに飛び出し、涙を流さんばかりに大笑いしてウサをはらす。しかし開高健『食卓は笑う』のような語り口のジョークにまでは至らない。

都市生活にくたびれたあなたが、ふらり、田舎へ旅に出る。肩がコッてしようがないので、世ふけにアンマを呼ぶ。品の良い盲目のお婆さんがやってきてにがい肉をしこしこともみほぐしてくれる。お婆さんは問わず語りに盲いとけなげ一途にたたかった半生記を語り、いまでは点字でなくても普通の活字を撫でるだけですべてわかるようになりました。ウソだと思うならお試しあれと、いう。そこで枕もとのバッグから雑誌をだしてわたすと、お婆さんは指で一撫でして、ア、わかりました、これは『文藝春秋』ですねといいあてる。つぎに一冊わたすと、ア、わかりました、これは『プレイボーイ』ですねといいあてる。何をわたしてもピタリ一言でいいあてる。そこであなたは感動し、婆さんの手をとってフトンにひき入れ、ごぞんじにさわらせようとする。婆さんはするりと手をひきぬき、これはさわらなくてもわかります、『主婦の友』ですねと、いった。(開高健『食卓は笑う』p74)

欧米と日本の文化の違いで、自らの経験からも日本の飲み屋でジョークを話す相手にあったことがない。ところがバリ島で長年暮らし、欧米人と食事をともにすると、ジョークが飛び出すことがしばしばだ。しかし英語でジョークを聞くと辛いものが有る、何が落ちかよくわからないのだ。哄笑することもできずただニコニコしているのは結構辛い。

これはおそらく食卓でスピーチする習慣がある、無いの文化の差だろう。それと日本人の気質にもよるのだろう、最後に落ちをもってくる小話は寄席ではその気で聞くからよいが酒場でちょっと辛気臭い、酒場では漫才風のテンポが盛り上がる、漫才で相方がいきなり小話を始めるのにも似てジョークのテンポが日本の酒場では合わないのではないかと。「甲斐でみるより駿河よい」みたいな語呂合わせで一気に笑えるのが好まれる(のではないか)。

しかしながら話の手法はとにかくとして日本人は下ネタが好きで、イタリア人もスペイン人もスエーデン人もアメリカ人もバリ人も概ね大好きだ(なかにはダーティージョークと軽蔑される場合もあるので一概には言えないが)。しかし、モスリム圏の人を相手に下ネタを話すのは気をつけた方がよいと肝に命じた体験をしたことがある。ジョークであれ言葉遊びであれ下ネタには冷たい視線を覚悟したほうがよい。

過去に石垣島で体験した話をしてみよう。石垣島にある安里民謡酒場で安里さんの唄を楽しんでいたときのこと、一夜に2回あるステージの最後には安里さんの唄とともに必ず客が一緒になって踊るフィナーレがある。待ってましたと地元のおじさん、おばさんが輪になって踊りだした。ひとりのおばさんは腰を前後にふりながら踊る。まさに行為を踊りにしたもので、日本人なら宴会芸で見かけた記憶のある方も少なくないと思う。私も輪に入ってそのおばさんと一緒になって踊っていると輪の中にいた日本人女性が連れのモスリム圏男性にけわしい顔で引き戻された。これは下ネタ話ではなく下ネタ芸だが配慮するという観点からは通じるものが。


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