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まさおレポート

「ゴッドファーザー」を見直してみたらさりげなく「カラマゾフの兄弟」ではないか

「ゴッドファーザー」パート1はドン・コルリオーネと彼が最も愛した末っ子マイケルの間の父親と息子の愛情がテーマだと理解したが見直してみると三人の息子と養子にも十分な愛情を注いでいる。裏社会で五大ファミリーの一つのドンとなった老境のコルリオーネは息子マイケルに上院議員あるいは知事になって表舞台で生きてくれるように切望する。

長男ソニーが撃たれて死に、ドン・コルリオーネが撃たれた後に息子マイケルが跡目を継ぐとの決心をドン・コルリオーネに伝えると「長男ソニーが後を継ぐと思っていた。フレドは、フレドは・・・」と言葉にならない。フレドは可愛いのだが出来が悪い息子なのだ。そして出来が悪いとは決して言葉に出さないところにドン・コルリオーネの不出来な息子への愛が強く感じられる。末子マイケルに「表の顔になって人々を操れ。上院議員や知事になれ」と言い聞かせる。

このシーンがこの映画が社会に受け入れられた理由のポイントではないか。台詞こそないが観るものに暗黙に「俺は時代と環境の中でやむを得ずこの道を選ばざるを得なかった。だから後悔していないが本当は違う生き方をしたかった。おまえは父の思いを実現してくれ」とメッセージを伝えている。ドン・コルリオーネは後悔など微塵もしていない。カラマゾフの兄弟の親父ヒョードルをアメリカ映画にするとこうなる。

ドン・コルリオーネのところに新興勢力のソロッツォが麻薬取引と保護を持ちかける。「酒と女は人間の本質に根ざしているが麻薬は薄汚い」と拒絶する。その後撃たれて回復したドン・コルリオーネが5大ファミリーを集めた会議で麻薬を扱わないように説得する。結局黒人以外には売らないという人種差別そのものの条件付きで賛成される。

同時に末っ子マイケルへのひとかたならぬ愛情を示す台詞もはく。「私は迷信ぶかい。・・・事故や自殺その他どんな原因であれマイケルが死ぬようなことがあればこの中の一人を恨む」冒頭の娘の結婚式でも家族との写真をとるときにマイケルが遅れていないと「マイケルが来てからだ」と云う。ドンが撃たれて入院中にマイケルが来ると嬉し涙とかすかな笑みを浮かべる。粗暴で、ドンの器でない長男ソニーや軟弱なフレッドも可愛いがマイケルには将来を期待している演出がそこここにあり実にうまい。

見直してみて作者マリオ・プーゾは完全にカラマゾフの兄弟の影響を受けていると見立ててみた。フョードルはアメリカ風に解釈したドン・コルリオーネであり、長男ソニーはやはりカラマゾフの兄弟の長男ドミートリイそのままでいい男なのだが単純粗暴な点が欠点だ。

次男フレッドはカラマゾフの兄弟のイワンなのだがフレドはイワンの優柔不断さを取りいれている。イワンは親父フョードルを手を下して殺したのではないが死を期待していたと悩む。フレドもドン・コルリオーネが果物屋の前で銃撃される現場で役立たずだったことを悩む。

三男マイケルはカラマゾフの兄弟のアレクセイでまじめな男なのだが未完の次作では革命家に変身するとある。変身する三男を取り入れている。

極めつけは養子のトムで弁護士でありファミリーの相談役なのだがカラマゾフの兄弟のスメルジャコフの立ち位置である。ただし性格は全く異なるがそこはそれ、べたな本歌取りは避け、「ゴッドファーザー」さりげなく「カラマゾフの兄弟」なのだ。さりげなく取り入れるというのがマリオ・プーゾのプライドでもあろうと勝手に思い込んでいる。

 

「ゴッドファーザー」 後悔と家族愛

2009-09-18 08:56:53 | 映画・音楽・読書・宗教
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