「空」はインド哲学では七面倒くさいものになるが、日本では古来から和歌で「空」を直感的に歌っている。なるほど理屈を述べて積み上げることの限界を和歌が見事に一刀両断切り裂いて見せる。
夕暮れはいづれの雲のなごりとて はなたちばなに風の吹くらむ 藤原定家
ウツ(空)とウツツ(現世)を往復する。いづれの雲はウツ(空)で「はなたちばなに風の吹く」はウツツ(現世)なのだ。
見渡せば花も紅葉もなかりけり 浦のとま屋の秋の夕暮れ 藤原定家
「花も紅葉もなかりけり」はウツ(空)で「浦のとま屋の秋の夕暮れ」はウツツ(現世)なのだと。
見えないけど確かに背景に隠れているもの、それがウツ(空)
松岡正剛氏の千夜千冊で教えてもらった。