コロナ禍でも驚異の増収──永守重信・日本電産会長
世界的な精密小型モータの開発で知られる日本電産が7月21日の決算発表で、他社が軒並み業績を低下させるなか異例の増益を発表し、話題となっています。
同社を牽引してきたのは、カリスマ経営者として名高い創業者・永守重信会長。その仕事に賭ける情熱や人生論について、月刊『致知』2011年10月号の記事から改めて振り返ってみました。
対談のお相手は、ウシオ電機の牛尾治朗会長です。
永守 「一番怖いのは、後から入ってくる幹部が昔の苦労を経験していないために、一流企業に入ってきたような感覚で振る舞うことです。そういう人たちには口で言っても伝わりませんから、プレハブ建屋を見せるのが一番いいのですよ。
そこは建物だけではなしに、当初からの記録もたくさん残っていて、私自身が現場で懸命に仕事をする様子も残っている。それを見ると皆ハッとするのです。逆に、それを見ても感激しない人は、最初から採用しないほうがいいです。
やっぱり考え方が一致していないと今後のグローバルな戦いは勝てません。ただ頭がいいとか、経験が豊富だとかいうだけではダメで、本当にその会社が好きだという人が集まってこないとしらけてしまいますね」
牛尾 「本当にそうですね」
永守 「だから私は採用担当者に言うのです。最近は一流大学からどんどん入社してくるようになったけれども気をつけろよと。一番大事なのは、日本電産という会社が好きだという人間、よく働くこの会社で自分も一緒に頑張りたいという人間が集まってくることだと。
一所懸命働くところから始まった会社なのに、ただ有名で給料も高いから入りたいとか、役員として入ってきて威張り散らすような気持ちでやられると、会社なんてあっという間に沈んでいくのですね」
牛尾 「おっしゃるとおりです」
永守 「だいたい会社がおかしくなる要因を6つ挙げよと言われたら、一番はマンネリでしょう。それから油断、そして驕り。人間はすぐこういう躓きをするのですが、この段階はまだ元に戻せるのです。
その次が妥協。震災がきたのだからしょうがない、円高だからしょうがないと妥協する。これはもうさらに落ち込みますね。次は怠慢です。頑張っても怠けても給料は一緒じゃないかとかね。そして最後は諦めです。そんなこと言ったってできません、という考えがはびこってきた時は末期症状ですね。
最初の3つはそんな大敵ではないけれども、後の3つに陥ったらもう取り返しがつきません」