わたしは今年の初めからNTT管路に対して国つまり国民が持つ無形財産権(公益特権)を梃子にした管理を推し進めるべきだと主張してきた。ただし管路内のNTT電気通信設備(有形財産)はNTTの資産であり手をつけない。
一見分離案に見えるが有形財産は一切分離せず、無形財産のみ、つまり公益特権を梃子にした公正競争管理を実現すべきだとして公益特権管理下の共同溝化を著しAmazonで電子出版した。それからほぼ一年が過ぎた。
総務省から「市場環境の変化に対応した通信政策の在り方 最終答申(案)」が12月5日に発表され、1月8日締め切りでパブコメが募集されている。パブコメに応募するために長文の案を読み進んだ。
線路敷設基盤の開放ルールはあるものの、多額の設備投資が必要であり、他事業者による同規模の電気通信設備の設置も困難(回線設置事業者の事業展開も地域限定的)であること等に鑑みると、NTT東西の線路敷設基盤と電気通信設備には、我が国の通信インフラ全体を支え、また、高度化を通じて設備競争を補完する公共的な役割を果たすことが求められる。
現状認識としては正しいが、さてどのような未来のインフラ環境を目指すのだろう。そう思いながら読み進める。
NTT東西のメタル回線設備は2035年頃を目途に縮退する見込みであるなど、今後もネットワークを取り巻く環境の変化や技術の進展等が想定されるため、線路敷設基盤の譲渡等に関する規律の在り方については、これらの環境変化を踏まえつつ、電気通信設備や線路敷設基盤の効率的な保有・運用とサービスの安定的な提供を併せ確保する観点から、引き続き検討することが適当である。
これでは一般論の域を出ず、なかなか将来像が窺えないなと読み続けると具体案らしきものが現れた。そして分離案が俎上に載るがこれはすでにコストと技術革新モチベーションから度々否定されてきた案であり、案の定、実質的に否定されている。
今回、NTTに対する構造規制が緩和されるのであれば NTT東西のアクセス部門の資本分離(NTTグループ外で別会社化)が必要との意見が示された。以下の4案が考えられる。
① NTT東西が引き続きアクセス部門を運営
② NTTグループ内でアクセス部門を別会社化(構造分離)
③ 資本分離(アクセス部門をNTTグループ外で別会社化)して国有化
④ 資本分離して民営化
アクセス部門の分離は利用の同等性・公平性の確保が一層徹底されサービス競争に資するとする。またアクセス部門を資本分離して国有化することが経済安全保障に最も資する面があるとしてプラス面を上げる。
しかし一方でコスト効率化が確保されず、設備競争が後退する懸念があること、 分離に伴い相当のコストを要すること、NTT既存株主への影響を考慮する必要があること、分離のための法案成立時点から2年程度が必要であるとしてつまり分離案は一応検討するけど、実際はなかなかハードルが高いよと述べているように思える。
あーあ、このあたりで案は終わるのか、あんまり切れ味の良くないな、今後も光伝送設備を巡っての火種を残したままか、かつて孫さんがぶち上げた「光の道構想」はコスト議論で潰されたが、何か足がかりになる案の提示が見えないなと考え始めたらとんでもない驚愕の提案があった。
これはわたしの深読みも思い込みも相当に入っているが読みようによっては日本の通信インフラのあり方を根本的に変革する提案だと。インフラシェアリング事業のJTOWERを念頭に次のように案が提示されている。
インフラシェアリング事業の促進の在り方について検討する。認定電気通信事業者と同様の公益事業特権を付与することが適当である。認定電気通信事業者の公益事業特権は、回線設置事業に公益性(事業の公益性)があり、かつ、事業の特性上、線路敷設基盤の敷設等に関し他人の土地等の使用を制限する必要があること(特権の必要性)等に鑑み付与される。適時適切に検討することが適当である。
鉄塔等の貸出しのみならず管路内の設備をインフラシェアリングする事業者について言及している。鉄塔から管路内まで、インフラシェアリングを行う事業者でも参入可能な提案に見える。
JTOWERのみ例示されているが既存のKDDIやソフトバンク、楽天等もこの事業に参入可能で管路内も鉄塔と同列でインフラシェアリング認定を行うということと読める。これにより実質的な共同溝化を図ることができると報告書案は提示しているように読める。いや鉄塔だけだよと返されるとがっかりなのだが。
NTTが電線撤去で空いた管路内を公益特権授権者として適正な賃料を設定するように検討を持っていければいいね。そうなればJTOWERのみならずKDDIもソフトバンクも或いは楽天も単独で或いは共同でこのインフラシェアリング事業に乗り出すだろう。実質的な光の道構想の実現だ。
この提案によりこの報告書案は光り輝いて見えてきた。自動運転には新たな膨大な光敷設が必要になる。NTTから事業法下で借りるもよし、あるいはインフラシェアリング事業者に参入すれば真の意味での公正競争が実現される。日本の通信の未来も明るいぞ。