手のひらの京
♠ はつ夏の三千院の紫陽花の老いたる青にわれは安らぐ 松井多絵子
~なんて小さな都だろう。私はここが好きだけど、いつか旅立つときがくる。~ 綿矢りさ の新刊小説 ✿ 『手のひらの京』 著者初めての京都小説 新潮社最新刊
かけがえのない日常に宿るしあわせ。生まれ育った土地、家族への尽きせぬ思い。人生に、恋に、悩みながらもまっすぐ生きる奥沢家三姉妹。京都の春夏秋冬が鮮やかに息づく。
✿ 綿矢版 『細雪』
わたしが娘のころ愛読した小説『細雪』の作者は谷崎潤一郎、綿矢りさより98年も前に生まれている。明治末期から昭和中期まで活躍した。戦中戦後の激動の時代に耽美的な小説を次々に発表した。『細雪』は、谷崎の妻と姉妹たちをモデルにして関西の上流階級の女性の生活が描かれている。未婚の頃の私は『細雪』の末娘の見合いあれこれに関心があり読みふけった。見合い結婚の参考書でもあったのである。
2004年、綿矢りさは19歳で芥川賞を受賞している。金原ひとみとのダブル受賞だったためか、何かと二人は比較される。綿矢はいま 毎週朝日金曜夕刊に 「私をくいとめて」 を4月から連載している。ヒロインは「おひとりさま」だが綿矢は結婚している。金原も1か月前から朝日新聞朝刊に連載小説「クラウドガール」を。金原はたしか綿矢と同年だが、結婚も早くすでに娘たちのママだとか。
昨年は「京都ぎらい」という本がベストセラーなり話題になった。それを意識して綿矢はこの小説を書いたのだろうか。私は今日の午後、本屋でまず立ち読みをするが、広告には小説のなかの3人の姉妹を紹介している。
長女・綾香 おっとりしているが結婚への焦りを募らせている
次女・羽依 入社早々、人気の上司と恋仲に。恋愛に生きる
三女・凛 いずれは京都を出よう・・・・ 自ら人生を切り拓く
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わたくしの抜け殻となりハンガーに吊られるコートは古寺の苔色
10月2日 松井多絵子