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歌とミニエッセイ

2012-11-22 20:42:28 | 歌う

          ★「朝日歌壇あれこれ③」

 短歌に関心のない方でも石川啄木の「働けど働けど」の歌はご存じでしょう。不況がつづいている今、この歌はとても私たちの身にしみます・

★啄木がじっと見たのは左手か、右手かあるいは冬の妻の手  松井多絵子

 「2009年「刊行の「2010短歌年鑑」に「今年の世相をあらわす一首という特集があった。この年の歌人アンケートに寄せられた千有余の歌を中心に、その現象を分類している。この特集で明治の歌人石川啄木の作品が一位に選ばれたことに注目したい。朝日歌壇の初代の選者は石川啄木(1886~1913)なのである。一位に推された作品は、★はたらけど/はたらけど猶わが生活(くらし)楽にならざり/ぢっと手を見る

 啄木が二十七歳で夭折したのは百年も前である。その後、多くの有名歌人が活躍した。にもかかわらず「はたらけどはたらけど」の歌はまるで懐メロのように、短歌にかかわらない人びとにも愛誦されている。明治末期も現在のような経済不況であったらしいが、大正も昭和も平成も、富める人はごく少数であり、大多数は経済的に恵まれていない。「はたらけどはたらけど」は庶民の「ぼやき」なのだ。実感がこもり調べのよいこの歌に私たちは酔う。啄木は夭折したが、この歌は不滅だ。この歌をただの「ぼやき」ではなく「名歌」にしたのは「ぢっと手を見る」であろう。 辛いとき、悲しいとき、淋しいとき、私たちは下を向く。うつむきながら手を見ている。手違い、手遅れ、手には様々なイメージが凝縮されている。手の表情を見ながら自分の手と語りあう」。

   以上は評論文「或るホームレス歌人を探るー響きあう投稿歌」より          


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