植物園「 槐松亭 」

バラと蘭とその他もろもろの植物に囲まれ、野鳥と甲斐犬すみれと暮らす

独学・・・下手な印も 数彫れば当たる

2023年06月13日 | 篆刻
1週間ほど前から「篆刻」を再開しております。それまで体調不良・園芸作業・自治会業務・各種旅行と「それどころではない」日々が数か月続いていたのです。その間さる方に頼まれてやっと三顆を彫ったくらいでありました。

もっともダメな原因は「軽い鬱症状」を自覚するようになり、倦怠感とやる気が出ないという症状にあったように思います。しかしながらいつまでも女々しいことも言ってられない、 と以前貰った精神安定剤などを適当に飲んだりして気持ちを奮い立たせている、という按配であります。

久々に手にした印刀で彫った「摸刻」はやはり腕がなまっている・篆刻に集中できない心理状態から調子が出ないままに終わりましたので、このブログには載せません、とい うより磨り潰してしまいました。再開後二本目がこれであります。自分で彫る文字を探し、それに合った字体を選び(集字)して自分の感性で彫るという遊印・自作印であります。

「無何有里」(むかうのさと) と日本語読みして「理想郷」のことを指します。九州に住む仲間によると「どこかで見たことがあった、と思ったら菊屋(地元で老舗の和菓子屋)の直販店の看板にあった」ということで、グループlineでちょっと盛り上がったのです。

理想郷は、あくまで理想・絵空事であって「無責任」な議員が選挙の時に掲げる空疎な言葉の代表選手であります。理想に向かって邁進すると言いながら、実際は子供がどんどん減り、年寄りは年金を減らされ公的金銭負担が増すばかり。消費税が上がり物価が上がり電気料金も卵も値上がり。若い人の給料は増えず結婚しよう子供を作ろうという気持ちも財力も将来の希望も細っていくばかり、理想とは全く逆の方向に向かっていると感じているのはワタシだけでしょうか?

しかし、とにもかくにも一本仕上がりました。次に彫ったのは大東文化大学書道家のテキスト「篆刻」の摸刻であります。このテキストは日本の現代篆刻家の第一人者とも称された「故河野隆」先生執筆の教本で、没後先生の親戚にあたるかつての職場の上司Wさんからいただいたものであります。これは篆刻家を目指す私にとってのバイブルであり、宝物でもあります。

Wさんとは定年後もゴルフ仲間で、お付き合いいただいていたのですが、プレー予定の前日に急にキャンセルの連絡が来ました。その理由が河野先生ご逝去で、Wさんの義弟であったのを初めて知ったのです。と言っても、その時点ではワタシは篆刻を始めたばかり、先生のことなど知る由もありませんでした。

今回彫ったのは「二.章法 ⑭界格」これは方形の石材の外郭だけでなく、各文字を境界線で仕切るという技法のひとつであります。そのお手本が「石井雙石」先生の「不二山客」の印です。

多少ミスっても、原本と違っても気にしません。練習ですから。

このテキストは約400個の印が紹介されておりますが、あくまで過去の名篆刻家書家の手になる章法・字法などを見て学ぶもので、これをいちいち学生さんに全部摸刻(同じような印を再現する練習をする)ことは想定していないと思います。学生さんの中には、それを実践する人もいるかもしれない、ではワタシもやるぞ、と始めたわけです。

様々な技法や事例・名刻を頭で理解しつつ、実際に真似して彫ったら独学でも上達するに違いなかろう、と始めたものですが今だ60本に満たない状況なので、いつになった全部こなせるものやら・・・・

それでも二三本彫るうちに調子が戻ってきました。昨夜のうちに大きさが近い石を在庫から出してきて印面を磨き、布字したところであります。
今回彫るのはなんとあの天才河井荃廬(かわい せんろ )先生の印であります。呉昌碩先生に師事し 明治に活躍した格調高い印を彫った偉人です。


一般的に篆刻の教本には、「よく磨いた印面を墨で塗りつぶし、朱墨を磨って、彫る部分以外(赤く残す線)を細字の筆で書く(布字)」とあります。これは時間がかかって面倒なのです。ワタシは構わず極細油性ペンを使います。磨いた面には墨も塗らず、彫るか残すか、そのいずれでも「線」を黒く書くことにしています。白文(字そのものを彫って朱の印の中で白い文字になる)は彫るべき部分を黒く書き、黒線を残さないように彫ります。朱文は、その逆で字線を彫り残すので、そこを黒く塗り、彫る場合は黒線だけが残るように彫るのであります。

こうすると、途中でおかしいな、と思ったらシンナーで消したりサインペンで加筆したりと、修正が出来ます。何より手間いらず時間の節約ができます。

通常彫る石はだいたい2㎝角の大きさ、それに比べるとかなり大きい印材ですが、オリジナルが大きい印面なので出来るだけその大きさに合わせて彫るのです。指導者もおらず、指導書も適当に解釈しとうてい「王道」を進んでいるとは言えません。狭い路地をぐるぐる回っているのかもしれませんね(笑)。

いいんです、遠回りのようでも、とにかく数をこなす、経験を積むのが上達の秘訣だと、独学で信じております。

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