植物園「 槐松亭 」

バラと蘭とその他もろもろの植物に囲まれ、野鳥と甲斐犬すみれと暮らす

石印材集めはギャンブルでも投機目的でもない

2023年06月14日 | 篆刻
ポケモンカードの中でも超「レア」なものは、オークションで1千万円以上にもなるそうであります。ワタシのせがれたちも子供のころの一定期間こいつに夢中になって「中に何が入っているかわからないシールに密閉されたカードを何百円かで「買ってくれーー」とせがんできました。

その頃から計算したら、少なくとも30年くらい前から「ピカチュウ・ポケットモンスター」というグッズが売り出され、特に子供や若年層からは絶大な愛好の対象として支えられてきたのです。いつのころからか、その一種のカードにプレミアムが付くようになって、本来はテレビゲームのキャラであった位置づけが、それ自体を求め、場合によっては投資目的で販売・転売されるようになったのですね。

子供たちの健全な娯楽、安心して遊ばせられるおもちゃとしての貢献は計り知れないと思います。しかし、売らんかな、少しでも購買欲を煽るためにあれこれと新たなコンセプト・新商品を発売する中で、過剰な子供の浪費につながり「射幸心」を刺激してきたというマイナス要素も考えなくてはなりません。

世にいう「健全な射幸心」などというものはまやかし、早い話が、楽して一攫千金を狙うという安直で不健全な精神による「ばくち」に近似するものであります。宝くじにはじまり、競輪競馬、株式・相場師などはどれも同類で運と感、ツキと読みで、元手を何倍かにしようという魂胆であります。

誰しも自分が幸せになりたい、と願う気持ちは尊く普遍的な心情であります。問題は、何をもって(価値観)幸せとするか、どうしたら(手段)幸せにたどり着けるのか、にあります。幸せの価値や種類は個人によってまちまちであります。人よりマシなら幸せなのか、日々平和で穏やかなだけでシアワセ?、うまいものが食えればいい、資産が増えればいい、愛する人が傍にいてくれれば・・・などなど。

しかし、幸せになるための努力や普段の心がけ、仕事や生活の中で自ずと醸成されるというのが自然で、誰にもとやかく言われない幸せ感でありましょう。「射幸心」はそうではなく、何かに狙いを定め一か八かやってみる、偶然に得られる成功や利益を当てにする ということに他ならないので健全どころか、借金してもギャンブルにのめり込む、といった行動につながるものであります。

先日のニュースでも、ポケモンカードの販売店に押し入り強盗や空き巣が侵入する事件が後を絶たないと報道されています。実行犯は、定職を持たず目先の現金が欲しいという「射幸心」につられ、SNSなどの闇バイトに応じた愚かな人間たちであります。短時間で簡単に高額なアルバイトがある、と聞いただけで普通ならば手は出さないものですが、リスクも考えず目先の偽りの「幸せ」に目がくらんでしまうのですね。

かくいうワタシは、学生のころから麻雀とパチンコにのめり込み、人生の大事な時間を空費し、多額のお金をぶんまいたに等しい生活を、断続的ながら長らく続けました。思えばギャンブル依存症だったのかもしれません。それは射幸心ではなく、現実から逃避したいとか刹那的な楽しみに浸りたいと思う気持ちが強かったのだと思います。

その虚しさに気づいて麻雀から足を洗ったのは40歳になる前でした。
パチンコは、酒を飲むと打ちたくなるという悪い習慣で、週に1,2度というのが20年以上続いたのです。これも10年前にすっぱりと手が切れましたが、つまらぬ射幸心のために時間とお金を浪費したことはわが人生最大の汚点であります。
どんなギャンブルも、ほとんどが「元も子もなくなる」システムになっております。例えば宝くじは、外れくじを長く保管していればそのうち価値が出る、という話を聞いたことがありません。競輪競馬もしかり、ほとんどの人が外して車券や馬券をそこらに撒いて捨てるということになるでしょう。

さて、そんなワタシが、現在の生活やお金の使い道でもっとも優先していることが「石印材」集めであります。これは、第一義的には「篆刻」に必須の素材を適正な価格かあるいは若干割安で買う、ということなので、射幸心とは無論関係がありません。
石は、ごくたまに「人造石」という外れ(ほぼ無価値)があるものの、ほぼすべてが「印材」として使用できる本物の自然石です。劣化も腐敗もないので何十年後でも無駄にならない、たまに銘石が紛れ込んで破格の価値が出る、ワタシの死後あるいは終活で処分することになっても、ヤフオクで取得した価額から大きく下がることはないのであります。

従って、石印材を集めるということは、博打でも投機でもなく、「貯金・貯蓄」に近い存在なのであります。換言すれば「紙幣」を古代の「石貨」に換金しているといってもいいかもしれませんね。

昨日届いたのは、ヤフオクで計12,350円で落札した印、6個であります。いずれも印面に刻の形跡はなく、側款や薄意といった細工もなし、実用として整えられた最近の印材と思えます。共通点は、一人の方の出品で、一応石の種別がはっきりとしていて、角材としてきちんと成型、丸みをつけて表面が磨かれている、ということであります。
赤い袋に入った小さな石は、「高山黄(または高山凍)」でありましょう。

下の4つは、1個ずつ別々に出品していたもので、落札額800円~5750円と、だいぶ差がありましたが、みんなが欲しがるような値打ちものではありません。(最近は、ちょっと良さそうなものは入札額が高騰して、この程度のものしか落札できないのです)
上の左から「牛角凍」右が「寿山石」、下は「結晶性黄芙蓉」、「寿山桃花」と出品者さんの説明書きにはありました。ワタシが気に入ったのは下の二つ、あとのは、まぁ同梱して送料が変わらないので、ついでに入札した、程度のものです。
これは薄灰色の凍石の素地に、赤い細かな点がたくさん散っている「桃花凍」と見ました。石印材の図鑑にも大概数点紹介される銘石の一つであります。大きさも3㎝角程度のたっぷりとしたボリューム感、これが1500円は大変お買い得でありました。ずっと欲しかった石で、その価値・値段などは大した問題ではないのですが。

一方の黄色い凍石は、結晶性というのが意味不明、また黄芙蓉というのもちょっと半信半疑で、どちらかといえば①黄青田石 ②高山黄 ③田黄石の母岩(山坑)に見えるのです。
これが一番高くて、5750円。艶があり純度も高い美しい石でありました。石の角にほんの少し朱色の部分があり、これが石質解明の手掛かりになりそうです。

石のオークションは、自分の値踏みした金額で入札するだけの事なので、基本当たりはずれという概念はありません。ダメなものであれば、自分の「目利き」が未熟であったと考えるだけのこと。届いてみたら思ったよりいいものだったか、そうでもなかったといった程度のことなので、ギャンブルの当たりはずれとは全く異なるものであります。

ポケモンの会社にとっては、子供がお小遣いをつぎ込み親のお金を減らすことや、オークションで高値が付くこと、さらに取扱店に手荒い盗難がおきることなど知ったことではありません。彼らは、転売目的だろうがなんだろうがポケモンカードが売れさえすればいいのです。そのためにどんな社会問題があろうと関係ありません。

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