植物園「 槐松亭 」

バラと蘭とその他もろもろの植物に囲まれ、メダカと野鳥と甲斐犬すみれと暮らす

印も人間も磨かないと光らない

2022年08月28日 | 篆刻
毎日独学で石を彫る「篆刻」を続けて2年近くになります。篆刻に限らず、書芸・絵画・音楽などの習い事はだいたい、教室に通ったり、先生に付いて指導を受けるのが良いとされ、客観的な上達のステップとして昇給昇段であったり作品展への出品をするのです。

ワタシは残念ながら、齢66となりこれから先生に師事をするなどは難しいと思っております。また教室そのものが、純粋な修練の場所とも言えず時間を空費するだけでなく、なかなか様々な支出を余儀なくされることが通例であると考えて、今後も先生につくことは無かろうと思います。

その分、専門家ならすぐに問題を指摘して貰ったり修正点を教えて貰えるのを、独学は、苦労して自ら見つけ工夫しなければなりません。得てして遠回りし、余計に時間がかかってしまうのも仕方ないと言えるのでしょう。

最近最も篆刻の技術の向上で学んだ事の一つが「石を磨く」ことの重要性であります。特に彫る印面は、定規を当てて隙間が出来ない様真っ平に削り磨くことが、プロの篆刻の彫りに近づく秘訣になります。当たり前の事なのですが・・・

石を垂直にして出来るだけ下の部分をしっかりつかみ、ぶれないようにサンドペーパーに押し当てて水平に磨きます。更に習得したのが「水研ぎ」で、耐水ペーパーを用いて水で濡らしながら研ぐというのが「鏡面」仕上げになるコツであることに気づいたのが数か月前、それから一段と技術が上がっていい彫が出来るようになりました。

ある篆刻家さんのブログには、注文を受けた印が彫り上がったら、持ち手になる側面から上部までピカピカに磨き上げるように心がけている、と書いてありました。そうすることで、使う側の気分が良くなり「良い品」が入手できたと満足するのだそうです。側面の状態は落款印としては何の意味もありませんが、そこを磨き上げ丁寧に側款を入れて美しく仕上げてこそ篆刻家なのだというのです。

一流の篆刻ならば、一流の作家が彫りやすい高価な良材を用い、幽玄で芸術的な印影を彫り、更に印全体を美しく仕上げてこそ評価されるし、お金も貰えるわけであります。

ワタシはそこにいくといまだ修行の身で、お金がいただけるほどのキャリアも腕前もありません。入賞歴もあるでなし、権威がやはくが付くような頼りにする先生もいない無名の老書生なのです。それでも篆刻を始めた頃には夢想だにしなかった「篆刻家」への階段を少しづつながらも上がって行こうと無謀とも言える努力をしてるのです。

さて、その石磨きでありますが、実は30数個の小印をここ二月で制作しました。倅の結婚披露宴で出席者全員に配るのです。これは、今春に結婚式を挙げた次男の時にやって、それなりに好評を博したのです。今回も、倅に頼まれてコツコツめでたい漢字「福」と「寿」の文字を彫っていきました。一部小学生用には動物印も彫りました。


そして昨日、倅夫婦を呼び寄せました。印の彫が大方終わった段階で、仕上げを手伝わせようと思ったのです。いとも簡単に印が出来上がるわけでは無い、と教えるためではありません。彼らが多くの方々に祝福され新たなスタートを切るにあたって、皆さんに配る印を自分たちが関与し手伝ったという付加価値を付けさせようと思ったのです。

彼らに頼んだその作業の大半は「面取り」であります。印材のほとんどが角形に切り出した石ですから、角が尖っています。印の仕上げの一つが、四隅の角を丸くし上部の角も丸く削ることで押捺するとき、手のひらや指に角が当たって痛いという事を避け、手触りを良くする作業になります。細かな目のサンドペーパーをたっぷり濡らし石を研いで貰います。自分でやれば、磨き上げるのを含め数時間で終える作業ですが、彼らに、丁寧に仕上げる価値を体感させ、他の人に喜んで貰うことが大切であることを知って欲しかったのです。

面取りが終わったら、印面を除く全体を超微細の紙やすりで研磨し、最後はセーム皮などで艶出しをしてもらいました。
3時間ほどかけてやったものの半分は、不十分であったので今朝、ワタシが更に仕上げをいたしました。いきなりやれといわれて簡単にできるなら苦労はしません。

口はばったい事を言えば、人間も同じで、角が尖っている人間は、他の人に痛みを与え不快にさせることもあります。外見も心も全体をきれいに磨き、角を丸くすることで人当たりも良くなり、自分の価値もそれだけ上がるということと心得るべし、であります。



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