昨年末、中西経団連会長が次のように発言した。
「年功序列・終身雇用をセットとする従来の日本型雇用システムでは、これからの社会の変化に対応できない。ジョブ型雇用などを組み合わせ、雇用流動性を高めたい。企業は経済価値・環境価値・社会価値を重視しており、社員にしても、自分の仕事が社会に貢献しているとの認識が充実感や、やる気につながる傾向が強い。この変化を踏まえて労使間でも議論を深めていく必要がある」
かっては経団連の会長と言えば「財界総理」と言われ、時には総理大臣にも苦言を呈する重厚な人物が多かった。
しかしこの10年来、極めて人物が小粒になっている。
日本の労働市場で、中西経団連会長がいうところの「年功序列・終身雇用」をきっちり守っている会社が、どの程度あると思っているのだろう?
従業員1000人以上の大企業の男性社員が労働市場に占める比率は8.5%である。
そして多くの会社がパワハラ的に50代半ばを過ぎた社員に早期退職を迫っている。
そしてこの経団連の考え方に従っているのが労働組合の最大の組織である「連合」である。
本来は労働者の権利を守るべき組織が「御用組合」化し、結果、社員にそれを見抜かれて労働組合の組織率はじりじりと低下している。
そもそも日本が誇るべき雇用環境をこの30年来壊してきたから、今のような「茹でガエル状態の経済」になっているのではないか?
1996年の「労働者派遣法」の改正により、歯止めの利かない非正規雇用を増やしてきた。
そしてこの非正規労働者は大部分組合に加入していない。
要は組合の無い社会構造を作り出したことが、この国の労働者を二極に分断してしまった。
「連合」も少しは反省したのであろう。
非正規労働者の組織化を計り、さらには中小企業にまで手を伸ばしている。
遅まきながらも「是」とすべき対応だと思う。
組織人員は17年ぶりに700万人台を回復したという。
この国が立ち直るためには、アメリカ型の労働慣行を無原則に取り入れるのではなく、日本型とミックスした新しいスタイルを作り出すべきであろう。
アメリカ型の労働は、「火にあぶった鉄板の上でダンスを踊らせる」ようなものだ。
日本型の労働は、「田んぼに苗を植えるような集団作業」に向いている。