めるつばうのおもうこと

めるつはミーム機械としてばうを目指します。

ふたりの距離

2007-11-20 10:10:27 | book
イーガン。
パートナーのことを知りたいと思う。
何を考え、何を感じ、なにを思っているのか。
なによりも、わたしのことが好きなのだろうか。

イーガン節のおなじみ宝石が出てくる。
宝石は精神活動(脳といっていいだろう)の代替であり、それに替える事で
劣化やボディ本体の破損にも対応可能なわけだが。
ここではそこにおけるアイデンティティの問題がネグっておいて
パートナーと同一化するということ。
試行錯誤がある。ボディを交換してみる。
わたし自身やってみたくはない。
なぜなら、”わたし”という個体があって”あなた”という存在があって
それが好きなのだから。わたしはあなたになりたいわけではない。

さて。交換してみたり、主人公がパートナーのサブボディに入ってみたり。
これはパートナーが途中でイヤになる。
そらそーだ。自分とセックスしてもあまり面白くなさそうだ。
イーガンも女性の性感のほうが強いというステロタイプに侵食されているのか
とちょっと面白くも感じた。
同時に、男性の願望というか妄想というか。レズビアンカップル+自分(男)
というステロタイプな夢がここにも登場している。
主人公が自分のボディにはいったパートナーとセックスするというのも面白いが
そこはぼんやりした感じだ。もうちょっと描き方はあるような気がする。

さて最後に意識的に同一体になるという。
一緒になってまた分離するということなのだけれど
なるほどなと思わせたのは、二人が二人の意識を持ったまま一緒になるのではなく
途中からはある意味では新たな人格が現れる。二人を足した第三の人格。

その後はお互いを真実の意味で知ってしまい、一緒にいる意味がなくなるという
辛い落ちだ。そう、ふたりではなくひとりになってしまったから。

わたしは他人は他者であるが故に好きになるのだと思ってきた。
同じような感じ方をした人のほうが波長を合わせていくのは容易い。
でもまったく一緒になるなんていうことはありえないと知っているし
それが実現したら、それは原初への回帰になってしまうこともわかる。
いくら望んでも出来ないから。
その差異、思考のサプライズが私は楽しいと思う。



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