戦前、外国人の接遇のために、国策として建てられたこのホテルには大浴場がありました。
ラウンジのクローズまでお酒を楽しんだあと、くだんのホテルマンと別れ際、「では明日…」とちょっと振り向きました。
一斉に剥製の動物たちの目がこちらを凝視しているのも、ステンドガラスの手が揺れているのも、奥の部屋から乾杯のカチン!という音が聞こえるのも、みな酔っているのが原因・・・
さすがに深夜の大浴場には、だれもいません。
大きな湯船に浸かっていると、カラカラカラ、トン。
遥か背後の戸が開いた気配がして振り向くと、なんの姿もありません。
「覗いただけだけなのかな?」
洗い場に座り、からだを洗っていると、チャポン、チャポン。
「あれ?」振り向いても湯船に人影はありません。
背筋にいやな寒気を感じながら、頭を洗い始めると、2つ置いたあたりの腰掛が、コツリッ。
慌てて泡だらけの頭にシャワーを浴びて、気を紛らわすために湯船にドボ~~~~~~ンと大きな音をたてて入る。
フ~~~~ッと深く息を吐いて、湯気で曇る窓を見つめてジッとしていると、窓をコンコンコンと叩く音。
仕事を終えて従業員宿舎に戻るホテルマンが、私に気づいて外から窓を叩いたのかなと思い、手を振って見せると、応えるかのように、また、コンコンコン・・・
翌早朝、大浴場に行き、湯船から外を眺めると見渡す限り雪の原。
昨晩は雪が降らなかったはずだけど・・・雪に足跡がない・・・
レストランへ朝食に行き、くだんのホテルマンを見つけて「きのう、大浴場の窓叩いたよね!」と聞いてみると、
つづく。
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