徒然なるままに ~ Mikako Husselのブログ

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書評:島田荘司著、『星籠の海 上・下』(講談社文庫)

2019年05月02日 | 書評ー小説:作者サ・タ・ナ行

『星籠(せいろ)の海』(2013)は、1993年の瀬戸内海を舞台にした大掛かりな国際的犯罪者の追跡と幕末の老中首座にあった阿部正弘による対黒船戦略に考案されていたらしい「星籠」の謎の追跡を主題とした推理小説で、御手洗潔と石岡和己コンビが一緒にあちこち飛び回った最後の事件という設定です。瀬戸内の小島に、死体が次々と流れ着くという相談が持ち掛けられるところからスタートし、御手洗潔は事件の鍵が古から栄えた港町・鞆(とも)にあることを突き止めます。そこでは一見関係のない事件が同時進行で発生していて、前編はそれらのパズルがバラバラに提示され、後編でそれらのピースが大きな絵にはめ込まれていくのですが、若干欲張り過ぎのきらいがあります。特に日東第一教会によって母親を殺され天涯孤独の身になってしまった宇野智弘という少年が南相馬で生まれ育ったという背景のためかどうか、急性白血病で亡くなってしまうくだりはなくてもいいのではないかと思いました。

それ以外は村上水軍や忽那水軍など、瀬戸内海の歴史がふんだんに盛り込まれていて非常に面白かったです。

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