徒然なるままに ~ Mikako Husselのブログ

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書評:エラリイ・クイーン著、宇野利泰訳『フランス白粉の秘密』(ハヤカワSF・ミステリebookセレクション)

2019年05月20日 | 書評ー小説:作者カ行

『フランス白粉の秘密』(1930)はエラリイ・クイーンの国名シリーズ第2弾で、舞台はニューヨーク5番街のデパート、フレンチ百貨店。ヨーロピアンデザインの家具の展示会中で、毎日正午に通りの人たちにも見られるようにショーウインドウが開かれ、壁に収納されていだベッドを出すためのスイッチを押すと女性の死体が転がり出てきます。この女性は百貨店の経営者フレンチ氏の奥方でした。かくしてチャールズ・クイーン警視が呼ばれ、息子のエラリイがくっついてきて捜査に当たります。間もなくショーウインドウは殺人現場ではなく、百貨店最上階にあるフレンチ氏の私室(会議室やカードルームなどを備えたアパートメント)が現場であったことが分かるのですが、フレンチ夫人ばかりでなく彼女の連れ子であるバーニス・カーモディも居た痕跡がその私室から発見され、おりしも彼女が昨夜から行方不明であるため、一見母親殺しの末の逃亡のように見えるものの、殺人&誘拐事件である可能性も捨てがたく、とにかくバーニスの行方を捜します。また、エラリイは社長私室のデスクの上にブックエンドに挟まれてあった5冊の本に注目します。それらはおよそ一人の人間が所有するとは思えないほど共通点のないバラバラな範囲の本だったので、殺人事件に関係するかどうかはともかく興味深い謎があるのではないかと愛書家のエラリイは考え、結局それが麻薬密売組織と絡んだこの殺人事件を解くカギとなります。

この作品はすっごく面白いというほどではないですが、殺されたのが富豪のご婦人であるにもかかわらずお家騒動ではなく、麻薬密売組織と関係してくるあたりがひねりがあってなかなかいいと思います。

ただ、厚顔無恥・大胆不敵の真犯人が、状況証拠以外の決定的な証拠を持たないエラリイに「お前が犯人だ」的に名指しされた時点で自殺するあたりはちょっと納得がいかない気がします。往生際悪く抵抗して逃亡をしようとしたところを射殺、という運びの方がキャラ的に整合性があるように思います。

 

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