徒然なるままに ~ Mikako Husselのブログ

ドイツ情報、ヨーロッパ旅行記、書評、その他「心にうつりゆくよしなし事」

読書メモ:Joachim Schaffer-Suchomel&Klaus Krebs著、『Du bist, was du sagst』

2023年01月04日 | 書評ー言語

言語と認知や思考の関係を扱った本の1つとして、教育学者Joachim Schaffer-Suchomelと経営者トレーナーKlaus Krebsの『Du bist, was du sagst - Was unsere Sprache über unsere Lebenseinstellung verrät(あなたが言うこと、それがあなたである ー言語がその人の人生観について明かすこと)』(2020, 10. Aufl., mvg Verlag)を読みました。

心理学の知見とトレーニング受講者たちの経験などを交えて、言葉を意識的に捉え、かつ使用することで、ポジティブな人生観を得る道を示しており、どちらかというとハウツー本的な性格を持っています。
第1部は、言葉の捉え方と具体的な語源や語呂合わせに基づく連想例の紹介で、第2部は日常的なネガティブキーワードをポジティブに変換するための辞書(Glossar)です。

言葉の癖を分析することで、その人の「Kulisse 舞台装置」(感情や人生観、マインドセット)が明らかになるという点に関しては説得力もあり、実に興味深いのですが、実際の言語分析の例を読んでいると、いかにもこじつけというような説明も散見されるため、これを読んで自分のマインドセットをポジティブにしようと考えていた読者諸氏はおそらく途中で嫌気がさしてしまうのではないかという気がします。
ドイツ語の言葉が持つイメージを知る勉強にもなりますが、こじつけも混じっているので、ドイツ語学習者にはあまりお勧めできない本。

私が「これは」と思えた箇所:
[das Wort Problem]
Unser Lebensweg ist gepflastert mit Problemen, einige wiederholen sich über Jahrzehnte hinweg. Problem bedeutet Vorgelegtes. Das, was wir in der Vergangenheit nicht gelöst haben, wird uns wieder vorgelegt. (S. 21)
[Problemという語]
私たちの生きる道は問題で敷き詰められている。いくつかは何十年間も繰り返す。Problemとは、「前に置かれたもの、提示されたもの」を意味する。私たちが過去に解決しなかったものが、再び私たちの前に提示されるのだ。

Wir nehmen wahr, worauf wir unser Interesse und unsere Aufmerksamkeit richten. Hieraus konstruieren wir unsere Wahrheit. (S. 59)
私たちは自分たちが関心と注意を向けるものを知覚し、これを基に自分たちの真実を構築する。
(「wahrnehmen 知覚する」に含まれる wahr (真)と 「Wahrheit 真実」をかけている)

タルムードからの引用
Achte auf deine Gedanken, denn sie werden Worte.
Achte auf deine Worte, denn sie werden Handlungen.
Achte auf deine Handlungen, denn sie werden Gewohnheiten.
Achte auf deine Gewohnheiten, denn sie werden dein Charakter.
Achte auf deinen Charakter, denn er wird dein Schicksal. (S. 74)
思考に注意せよ、なぜならそれらは言葉になるから。
言葉に注意せよ、なぜならそれは行動になるから。
行動に注意せよ、なぜならそれは習慣になるから。
習慣に注意せよ、なぜならそれはあなたの人格となるから。
人格に注意せよ、なぜならそれはあなたの運命になるから。

セネカからの引用
Nicht weil es schwer ist, wagen wir es nicht, sondern weil wir es nicht wagen, ist es schwer. (S. 137)
それが難しいという理由で、私たちはあえてそれをしないのではない、私たちがそれを敢えてしないから、それは難しいのだ。
(「案ずるより産むが易し」ですかね?)