『民王』も4年ほど前に読んだ作品ですが、当時のレビューを再発見したので、こちらに転載しておきます。
『民王』は池井戸潤にしては異色の政治エンタメです。テロ攻撃として総理とその息子の脳波が入れ替わってしまいます。後にかかった歯医者にチップを埋め込まれたことが判明します。設定はSF的。入れ替わった息子は残念な成績の人で、総理として答弁の原稿にふりがなが振ってなかったために飛んでもない漢字の読み間違いをし、某元首相を思い起こされます。親父の方は息子の代わりに就職活動で、面接をこなすうちにバカ息子が実は熱い正義感を持ってることに気付き、党と自分の利益しか考えなくなっていた自己を反省し、初心に帰ろうと決意するという実に夢のある話です。政治とはいかにあるべきかという理想が奇妙な事件を通して描かれています。痛快政治コメディという触れ込みには、あまり同感できません。むしろ、現実に鑑みて情けなくなってきますね。