徒然なるままに ~ Mikako Husselのブログ

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書評:今野敏著、『レッド(新装版)』(ハルキ文庫)

2022年09月25日 | 書評ー小説:作者カ行

環境庁の外郭団体に出向させられた警視庁捜査四課の相馬春彦は、仕事への情熱を失った日々を送っていた。そんなある日、山形県にある「蛇姫沼」の環境調査を命じられた相馬は、陸上自衛官の斎木明とともに戸峰町に赴く。だが、町の様子がどこかおかしい。なにかを隠しているような町役場助役と纒わりつく新聞記者。そして、「蛇姫沼」からは、強い放射能が検出された――。相馬たちを待ち受けているものとはいったい何か? 傑作長篇小説、待望の新装版。(解説・細谷正充) 

『レッド』は1998年に発行された書下ろし長編で、ポリティカル・エンターテイメントに分類できる作品です。話が日本国内にとどまらず、アメリカの政府機関・諜報機関などが絡んでくるスケールの大きなドラマ展開です。

最初は地元の「蛇姫沼」の「蛇姫」伝説が出て来るので、何かそれにまつわる、またはそれにちなんだ事件の話なのかと思いましたが、全然違う展開になるので、楽しませてくれます。

はみ出し者の刑事とはみ出し者の自衛官が環境庁の天下り外殻団体に出向している身分でそれぞれの信念に基づいてなお行動していく様に感銘を覚えます。

この作品の特徴は、完全な悪役が描かれないところです。それぞれの立場でそれぞれの信念に基づき任務をこなしている人たちがおり、陣営が違えば、抜き差しならない形で対立してしまうこともあるという社会の仕組みが浮き彫りになります。
B級スパイ映画のような単純な勧善懲悪のヒーロー物にならず、登場人物たちのキャラクターがそれぞれ丁寧に描写され、物語に深みが出ています。


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