メルケル政権がフクシマ原発事故後、2010年10月に決定したばかりの原発稼働期間延長を反故にし、原発8基の即時停止、及び2022年までの脱原発を決定した(詳しくは拙ブログ「ドイツの脱原発~その真実と虚構、現状(1)」)ことについて、原発事業者RWE、エー・オン、ヴァッテンファルの3社が所有権、職業及び事業の自由を侵害されたとして、憲法裁判所に訴え、3月15日から公判が開始されました。公判は2日間続きます。3社とも脱原発に異議はないとした上で、適切な損害賠償(約200億ユーロ)を求めています。
争点となっているのは、2011年の原発8基の即時停止及び、2022年までの稼働期間制限が国家による収用に相当するか否かです。それが「収容」であるという根拠は、原発事業者によれば2002年に締結された脱原発契約における脱原発までに生産可能な「残留電力量」が、憲法の保証するところの所有権にあたるということですが、政府側の法律専門家クリストフ・ミョラーは、「残留電力量」は当時の政府の予想電力量であり、事業者に生産の権利を保証したものではないという見解です。つまり、「所有権」ではなく「業績予想」に過ぎないので、それが減ったからと言って損害賠償を求める根拠にはならないということです。
バーバラ・ヘントリックス連邦環境相(SPD)は、2002年に想定された残留電力量は2011年の脱原発法においても事業者にそのまま一任されている、と強調しました。
8人の憲法裁判所判事たちは、後半最終日の今日、原発事業者側の言い分である「所有権」の根拠に疑念を抱いていることを匂わせました。判事の一人であるラインハルト・ガイアーは【収用】の条件として、国家が物資を統治権に基づいて調達し、自らそれを使用した場合又は使用する意図を持っていた場合を挙げ、原発による発電量の制限はこれに当たらない、という見解を明らかにしました。ガイアーはそのことは分かり易くコカインを例にとって説明:「国が薬物ディーラーからコカインを押収する際、確かに他人の所有権を激しく侵害することになるが、国がコカインを自ら所有することを意図したとは言えない。その反対で、国はそれを事情が許せば燃やしてしまいたいくらいだ。原発事業者の言い分は国がコカインディーラーに高額の損害賠償を払えというようなものと理解している。」
それに対してエー・オンの弁護士は「コカインの所有及び販売は違法だが、原発による発電は違法ではないのでその譬えは不適切」と反論しましたが、原発事業者側が勝訴する見込みはまずないと専門家らは見ています。脱原発法は合憲という見解が主流を占めています。
正式な判決は数か月後に出る予定だそうです。合憲判決が出ることを願うばかりです。そうでないと、結局のところ納税者が私企業の損失補填をする羽目になってしまいますから。
参照記事:
ハンデルスブラット、2016.03.16付けの記事「コカインの例は適用できない」
フランクフルター・アルゲマイネ、2016.03.16付けの記事「判事らはコンツェルンの言い分を疑問視」
南ドイツ新聞、2016.03.15付けの記事「脱原発:何十億ユーロの裁判」
学ぶ気がないのでしたら、二度と私のブログにこのような低レベルのコメントを残さないようにしてください。
驚いた。